357話 ページ11
「そんなにやりにくくないよ」
黒木くんは胸で受け、高く上げたクッションが落ちてくるのを待って踵で捕らえ、はね上げるようにして肩に移すと、そこから持ちあげてヘディングし、もう一度足に落として踵と爪先で何度かくり返して蹴りあげ、私に蹴る。
「ん、悪くないね」
「だろ?」
私も胸で受け取り、右足、左足でボールを蹴りあげてまたぎ、腿、肩、頭で打ち上げる。
たしかにいい感じだが、やはり多少ボールと違う。
サッカーボールを常に持ち歩くというのは難しいけど、何とか簡単にすることは出来ないだろうか…。
「桜田、小塚が来たよ」
黒木くんの声で、現実に戻る。
また考えこみながらやっていたらしい。
「うまくいったよ。抗ヒスタミン薬を分離した」
そう言ってサンプル瓶をふってみせる。
「でも困ってるのは、投薬の量なんだ」
眉をひそめて、私たちを見まわした。
「薬のきき方って、人種によってちがうらしい。たとえば麻酔薬だと、黒人は少量でもよくきく、その次は黄色人種で、白人はいちばんききにくいんだ。もちろん体重によってもちがうけど。どのくらい入れればいいと思う?」
広く考えれば、上杉のテリトリーだしな…。
「基本、そいつは13歳用の風邪薬だ」
若武くんがきっぱりと言った。
「だから、たいしたことないって。あの熊男たちの体重は、上杉の2倍くらいありそうだから、倍でいいんじゃね?もしダメでも、ちょっと長く寝るだけだよ」
小塚くんは、ぶるっと体を震わせた。
「アレルギーとかを持ってて、妙な反応をするかもしれない。慎重にしないと」
若武くんは、うんざりするといったように息をついた。
「おまえ、うざい。2倍でいい。やれよ」
小塚くんは、ガンとして首を横にふった。
「ボクの責任ではできないよ」
若武くんがどなる。
「じゃ、オレの責任でいいからさ」
2人はにらみ合う。
小塚くんが心配しているアレルギーとかの情報が手に入れば、少し変わってくるかも。
黒木くんに目配せすると、彼もうなずきドアに歩いていく。
「オレがリサーチしてくる」
出ていって、まもなく戻ってきた。
「あの熊男2人は、この城に来て1年になるが、その間、一度も医者にかかったことがなく、薬を飲んだこともないそうだ。何かを食べたり、かいだり、つけたりしてアレルギーを起こしたこともない」
立花さんと小塚くんがうなずき合っていると、黒木くんはニヤッと笑った。
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mio - 返信ありがとうございます!あまり無理をしないでガンバってください!! (2020年3月16日 14時) (レス) id: 2668335830 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - mioさん» コメントありがとうございます!更新はもうしばしお待ちください。お話は出来てるのですが、打つのが中々…。それでも、皆さんに少しでも早くお届けするため、がんばっております。これからもよろしくお願いします! (2020年3月14日 14時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
mio - 更新頑張ってください!応援しています!! (2020年3月14日 14時) (レス) id: 2668335830 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 忍大好きマンNさん» コメントありがとうございます!皆様の応援を糧に、精一杯がんばっていきます。これからも読んでいってください。 (2020年3月11日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ももりんごさん» コメントありがとうございます!返信遅くなり申し訳ありません。そこまで言っていただき、本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いしますね♪ (2020年3月11日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年2月21日 13時