その3 ページ9
それも食べ終えると、貴和がカバンを探りだし、私もカバンから小さな箱を取り出した。
「それじゃ、遅くなったけどメリークリスマス」
『ありがとう。私からも、メリークリスマス』
貴和からのプレゼントは、片手で持てる細長い箱に入っている。
「開けてみてよ。オレも開けていい?」
『ええ、もちろんよ』
ラベンダー色のリボンをほどいて、白い包装紙をそっと開く。
中の箱のふたを持ち上げると、中から薄いピンクのグロスが出てきた。
『きれいな色ね。ありがとう』
「オレこそありがとう。大事に使わせてもらうね」
私が貴和に贈ったのは、黒がベースで、紫の石がはめ込まれたネクタイピン。
ネクタイピンの意味は[あなたを見守っています]。
知っているかどうかは分からないけど、お守りがわりにでもなってくれたら、と思って選んだ。
「そろそろ行こう。オレ、ごちそうするから」
『いいの?…ありがとう。それじゃあ少し、お手洗い行ってきていいかしら』
「わかった。じゃあ店の外で待ってるから」
貴和と分かれて化粧室に入ると、鏡の前でもらったグロスを取り出した。
そして実際につけてみると、今日の服にもよく馴染む。
ナチュラルな色だから、どんな服にも合うだろう。
そこら辺は、貴和の考えの深さがよく分かる。
グロスを大事にしまって店を出ると、気づいたのか、貴和も嬉しそうに笑った。
「よく似合ってるよ。連れて行きたいところがあるんだ」
『ありがとう。じゃあ行きましょうか』
そう言って手を差し出すと、貴和はふっと笑って、今度は指を絡めて手を繋いだ。
距離が近くなる分、あたたかい。
そこからは話すことなく、ただ一緒に歩いた。
連れてこられたのは、町から少し離れた高台。
広場のようになっていて、ベンチが置かれている。
そしてそのベンチに座ると、町が一望でき、今は夜景が見えていた。
「ここ、1人でたまに来るんだ。人もほとんど来ないから、何か考えたいときにちょうどいいんだ」
『そんなとこに連れてきてよかったの?』
「Aならいいよ。綺麗でしょ?」
『…そうね』
前世の私も、1人で夜景を見に行くことがあった。
でも、それは自分を追いつめるため。
自分がこの仕事をしているからこそ、この景色が守られているのだ、だから途中で投げ出すわけにはいかない。
そう思いこむためで、綺麗だと思ったことはなかった。
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きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» リクエスト更新致しました!これからもぜひ、お気軽にリクエストしてください。ありがとうございました! (2020年6月23日 6時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 早っ(笑) 了解です。ありがとう (2020年6月22日 21時) (レス) id: 724d0f98c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» 了解しました!おそらくどちらも続編の方で更新となるので、連絡致しましたらそちらへ飛んでください。リクエストありがとうございました! (2020年6月22日 21時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 忙しい所すみまん。もう1つリクエストさせていただきます。優先順位はきょっちーさんの好きな方で宜しいのですが、清香ちゃんがぶりっこになって黒木君やkz メンバーを驚かせる、というのです。理由やきっかけはお任せします。すみません、宜しくお願い致します。 (2020年6月22日 21時) (レス) id: 724d0f98c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» 了解しました!清香ちゃんのあることから、もしかしたら想像とは違ってしまうかもしれませんが、精一杯書かせていただきます! (2020年6月22日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年12月9日 14時