愛妻の日(10年後)NOsideから ページ18
ある会社の一室に、激しくキーボードを打つ音が響いている。
その音の発生源は、黒い長髪を一つに結んだ若い女性。
その女性の様子をうかがいながら、男女の同期がこっそりと話している。
「なんか今日、桜田さんいつもよりすげぇな。納期近かったっけ?」
「今日は愛妻の日なんだって。それで同棲中の彼氏が、夕飯をすき焼きにして二人でつつこう、って言ってくれたらしいよ」
「ああ、あのやたら顔がいいラブラブ彼氏」
「とにかくそれで、絶対定時にあがる!って頑張ってんの」
「え、そうなの?困ったなぁ…」
急に入りこんできた声に二人がふり返ると、中年の部長が気まずそうに立っていた。
「困ったって、何かあったんですか?」
「まあ、ちょっとね…。桜田さーん」
『何ですか』
桜田と呼ばれた女性は、パソコンの画面から目を離さないまま反応した。
「実は先方のミスで、10日後納期だった案件、明日までにお願いしたいんだって…」
その時、はじめて女性は3人の方へ顔を向けたが、後に同期であり友人である女性は語る。
「Aちゃんのあんな絶望のような、怒ったような、悲しんでるような…。とにかくあんな顔は見たことないし、これから見る機会があるのかも分からないな〜」
※※※
黒木side
すっかり夕飯の準備が整ったダイニングテーブルを前に、小さくため息をつく。
時計が示す時間は、午後7時半。
4時くらいにAから、定時は無理そうだけど全速力で帰る、というメールが届いた。
広い部屋にオレ一人。
昔は何とも思わなかったのに、今はかなり寂しいなんて感じてしまう。
Aの温もりが当たり前になっちゃってるんだな…。
この10年で、オレはかなり女々しくなった気がする。
それもこれも、Aがオレを甘やかすせいだ。
そんなことを思っていると、スマホがAからの着信を示す。
「もしもし」
【Aよ!今、会社出たから走って帰るわね!】
「いや、普通に電車乗ってきていいから」
【電車より走った方が速いもの!とにかく、あと20分くらいで着くからっ】
「分かったけど、事故るなよ」
分かったわという、本当に分かってるのか微妙な返答と共に、電話は切れた。
電車に乗れといいながらも、走ってまで早く帰ってこようとしてくれていることに、顔がゆるむ。
ソファにかけていた上着を手にとって、家を出てカギをかける。
行き先はコンビニだ。
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きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» リクエスト更新致しました!これからもぜひ、お気軽にリクエストしてください。ありがとうございました! (2020年6月23日 6時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 早っ(笑) 了解です。ありがとう (2020年6月22日 21時) (レス) id: 724d0f98c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» 了解しました!おそらくどちらも続編の方で更新となるので、連絡致しましたらそちらへ飛んでください。リクエストありがとうございました! (2020年6月22日 21時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 忙しい所すみまん。もう1つリクエストさせていただきます。優先順位はきょっちーさんの好きな方で宜しいのですが、清香ちゃんがぶりっこになって黒木君やkz メンバーを驚かせる、というのです。理由やきっかけはお任せします。すみません、宜しくお願い致します。 (2020年6月22日 21時) (レス) id: 724d0f98c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» 了解しました!清香ちゃんのあることから、もしかしたら想像とは違ってしまうかもしれませんが、精一杯書かせていただきます! (2020年6月22日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年12月9日 14時