283話 ページ37
男は足元を掬われすっ転ぶ。
その隙に小塚君と黒木君がミシアさんを捕まえ、店の脇に隠した。
「何だ、君達は」
男は転んだまま、私達を睨み上げた。
「子どものいたずらにしては、酷すぎないか」
若武君が私の方を向いた。
「桜田、通訳頼む」
『どうせ言業が通じないのだから、ここは子どものいたずらとして誤魔化しましょう。あまりこちらのことを知られたくないわ』
若武君ははっとしたように頷いた。
「よし、ごまかそう」
そう言うと男に向かって片手を伸ばし、起きあがるのを助けてやりながら微笑んで言った。
「このばかやろう、おまえなんかし.ね」
上杉もニッコリ笑って言った。
「女狙うんじゃねーよ。クソ親父」
そうして2人で頭を下げながら、悪口雑言言いたい放題。
2人の影からそっと目の色を伺う。
男の目は私が知っているものだ。
しかし何故その目をした人物がここにいるのか。
男は何を言われているのかわからなかっただろうが、若武君も上杉も態度では謝っているので、仕方なさそうに舌打ちして引き上げていった。
「よし、撃退だ」
二人と共に立花さんのところに戻ると、小塚くんと黒木くんもミシアさんとメイドさんを連れてこちらにやってきた。
「どうもありがとう。助かったわ」
ミシアさんはまだ真っ青で、黒木君によりかかるようにして歩いていた。
「家までお送りしましょうか」
黒木君が言うとミシアさんは頷いた。
「そうしてくれると助かるわ。あ、車はあるのよ。よかったら一緒に乗って」
ミシアさんはそう言いながら私達を見回した。
その目は私が前世で最も見てきた目。
背中を冷たいものが走る。
この女は危ない。
※※※
ミシアの車は運転手つきのリムジンで、私達6人とミシアとメイドさんが乗っても、まだゆとりがあるくらい広かった。
しかし閉鎖された空間で自然と体が強張ってしまう。
「実は私」
車が走り出すとミシアは震える声で言った。
もちろんフランス語だったから私と立花さん、黒木君が代わる代わる通訳した。
「遺産を相続してから狙われているような気がしてしかたないの」
遺産?
フランス語が分かるメンバーが不思議そうな顔をしていると、ミシアは急いでつけ加えた。
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きょっちー(プロフ) - ゆめさん» コメントありがとうございます!次はシンデレラです。私もKZのみんなと旅行したいものです。これからもお願いします! (2019年12月6日 7時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 続きが気になります!更新頑張ってください! (2019年12月5日 19時) (レス) id: 21a29bd71d (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - RiRさん» 返信遅くなってすみません!繰り返し読んでいただいているようで、本当にありがとうございます!駄作者のことまで気にかけていただいて…。これからも応援してもらえたら嬉しいです。 (2019年12月3日 16時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
RiR - とっても素敵なお話をありがとうございますm(_ _)m気づいたら5周目ですww 応援しております。無理のない範囲で私に続きをお恵みください! (2019年12月1日 16時) (レス) id: 6882897af8 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 三毛猫さん» ありがとうございます!ただ今、新企画も企画中ですので、そちらも楽しみにしていただければ嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2019年12月1日 10時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年11月30日 15時