282話 ページ36
それはパリで発行されている英字新聞で、記事は全部英語だったが、英語が得意な若武君なら問題なかったのだろう。
「ほらこれ」
ガサガサと広げた新聞の中には、若い女性の写真が大きく載っていた。
「ん、この顔だったよ」
立花さんが言うと若武君は記事を読み上げた。
「富豪紹介。第24回。
現代のシンデレラ、ミシア嬢。
19歳、元モデル。
ミシア嬢は幻の画家と呼ばれている有名画家ラングに見出され、彼に創作のインスピレーションを与える女神として、高額のギャラで専属契約を結んでいた。
このためシンデレラ・モデルといわれていたのだが、先週そのラングの養女となり、彼の莫大な財産を相続することになったのである。
フランス内にいくつもの城を持っているラングは、現在オーベルニュ地方サン・フルールの城に住んでいるが、ここは広大な敷地で内部を列車が走っている。
地元住民も無料で利用できるこの列車は、ミシア嬢にちなんでシンデレラ特急と名付けられているとか」
なるほど、案外話は単純かもしれない。
「つまり大金持ちになったミシアを、どこかの男がつけ狙ってるっていう話じゃん」
若武君が新間を畳みながら言った。
「これは事件だ。彼女を守ってやろうぜ」
私達は頷き合った。
「それにうまくいけば金になる」
若武君は嬉しそうに笑う。
「富豪令嬢ならきっとたくさん礼金をくれるはずだ」
今まで依頼料が入ったことはないからな。
上杉も小塚君も黒木君も、まったくその通りだと言わんばかりの表情だった。
「今まで1円も入ってないじゃん。ようやく探偵事務所らしくなるぜ。会計係を決めよう」
そう言った若武君の肩に、黒木君が手を置きながら店の方に目をやった。
「そいつはあとだ。見ろよ」
店のドアが開いて、ドア・マンに見送られたミシアさんとメイドらしい女性が出てくるところだった。
「よし、接近だ」
若武君が指示を出すのと、店の脇にいた男がすっとミシアさんに近寄っていくのが同時だった。
それを見たミシアさんは真っ青になり、逃げだすように走りだした。
「黒木と小塚、彼女を保護」
若武君が叫んだ。
「上杉、桜田、一緒に来い」
私達はミシアさんを追いかけようとする男の前に飛びだし、その脚に向かってタックルをした。
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きょっちー(プロフ) - ゆめさん» コメントありがとうございます!次はシンデレラです。私もKZのみんなと旅行したいものです。これからもお願いします! (2019年12月6日 7時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 続きが気になります!更新頑張ってください! (2019年12月5日 19時) (レス) id: 21a29bd71d (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - RiRさん» 返信遅くなってすみません!繰り返し読んでいただいているようで、本当にありがとうございます!駄作者のことまで気にかけていただいて…。これからも応援してもらえたら嬉しいです。 (2019年12月3日 16時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
RiR - とっても素敵なお話をありがとうございますm(_ _)m気づいたら5周目ですww 応援しております。無理のない範囲で私に続きをお恵みください! (2019年12月1日 16時) (レス) id: 6882897af8 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 三毛猫さん» ありがとうございます!ただ今、新企画も企画中ですので、そちらも楽しみにしていただければ嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2019年12月1日 10時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年11月30日 15時