22話 ページ7
「それにもし高柳に近づくんなら、若武しかダメだよ。僕達皆、顔を知られてるもの。あの粉も見てるしね。絶対カンぐられるに決まってる」
「よし」
若武君が決断するように言った。
「梅津優子に近づこう。これはアーヤ、お前の役目だ」
突然言われて、立花さんは驚いたようだ。
「何で私なのよ」
「女は女同士の方がいいからだ。本当は同じクラスの、桜田の方がいいんだろうけどな」
「そんなこと関係ないじゃない。それに私は国語のエキスパートなんだから。対人関係はダメなの」
立花さんがそう言うと、若武君はからかうように笑った。
「へえ。じゃお前、自分の調査の結果を報告できる?高柳真人がキーホルダーを投げて、すぐまた取り戻しに来た理由について」
立花さんは答えにつまって若武くんを睨んだ。
すると若武君は丸めた人差し指を出して、立花さんの額を弾くように伸ばした。
「ほら、だめだろう。いい子だから言われた通りに動けよ」
「おい、若武」
上杉君が少しトゲのある声で言った。
「アーヤに威張るのはよせよ。お前だって、今回のことに関しちゃ何もしてないじゃないか。俺や小塚や黒木はきちんと動いてるんだぜ。なのにお前は何もやってやしない」
きっぱりと言われて、若武君はムッとしたように目を光らせた。
「俺はリーダーだ。リーダーにはリーダーの仕事があるんだ」
黒木君が大人びた笑いをうかべて、天井を仰ぎながら言った。
「その仕事は当面、俺達が代わってやるよ。お前は梅津優子に接近するんだ。アーヤと一緒にやれよ」
若武君は横を向いたまま、投げ出すように答えた。
「わかったよ、ちきしょう」
※※※
次の塾の日、私は授業ギリギリに教室に入る予定で来た。
すると三谷Aの隣の教室のドアの陰に、若武君と立花さんがいた。
三谷Aの出入り口前では、梅津さんが辺りを見まわしている。
梅津さんは、背は平均ぐらいでショートカット、大きな目の優しい子だ。
私は、ひとまず二人の死角になるように隠れた。
「俺…あいつ知ってる。たしか…星羽大付属を受けに行った時だと思ったな。あいつといっしょの教室だった」
ということは、若武君はあの騒動を知っているのか…。
「なんで知ってるの」
立花さんの問いに、若武君は肩をすくめた。
「受験中に後ろでガランって音がして、俺の足元に鉛筆が転がってきたんだ。びっくりして後ろを向いたら、あの子が机に俯せてた。気分が悪くなったみたいでさ」
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きょっちー(プロフ) - 天愛さん» ご指摘ありがとうございます!しかしそのシーンでは原作の上杉君もアーヤと言っており、何か意味があってそう呼んでいる可能性もあるため、このままでいかせていただきます。コメントやしっかり読んでくださっているのはとても嬉しかったです。これからもお願いします! (2020年8月14日 22時) (レス) id: f1276d6d57 (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 126話の上杉が立花じゃなくて、アーヤって言ってしまってます!確認してみてください(^_^) (2020年8月12日 16時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 麗奈さん» 読んでいただきありがとうございます!夢主ちゃんにとても注目していただき、嬉しいです。ゆっくりではありますが、これからも更新していきますので、これからもよろしくお願いします! (2019年10月14日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
麗奈 - 私は、夢主のセリフがとても好きです。一歩引いた目線から考えたことがないので、さらに考えが深まりました。私は、黒木君推しなのでとても展開が楽しみです。これからも頑張って書いて下さい。 (2019年10月13日 20時) (レス) id: 2e81cd4f4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年8月29日 18時