20話 ページ44
目を見たいが、後ろを向いているため分からない。
とりあえず通気孔から出る。
証拠は掴めた、後はここからどうするかだが…。
その時、後ろから何かが近づいてきた。
「おい」
『…何でしょう』
「君は誰かな？見たことない顔だな」
砂原社長だった。
『はい、昨日から短期バイトをさせて頂いている、新庄誠也です』
「そうか。なぜここにいる？何か見たか？」
『…見られてまずいものでも？』
私はわざとカメラをちらつかせる。
それで砂原社長は見られたと判断したのだろう、襲いかかってきた。
その手を払い退け、瞬間に目を見る。
今まで何度も見てきた目だ。
相手の隙をつき、首をむち打ちで済む程度に狙う。
痛みで動けなくなっているところを、わざと見せつけるように塀を飛び越え走り去る。
これで私は必要期間以上に働かず、誰かの印象に残るリスクを避けられた。
警察に届けられることもない。
そんなことをすれば、偽造の件を自白するようなものだ。
もしものための証拠は掴んだ。
ここから先は、あの子達と動くとしよう。
※※※
あの会議から一週間たった土曜日。
私は少し遅れて若武君の家についた。
「おお、来たか。こっちだ。書斎初めてだろ」
前来たときは若武君の部屋だったからね。
「ほら、ここ」
それは廊下の突き当りで、若武君がドアを開けると、光の差し込む広い部屋が見えた。
庭に面して三つの白い出窓があり、レースのカーテンがかかっている。
部屋の中央にテーブルとふたつのソファ。
そこに黒木君と上杉、小塚君が思い思いの格好で座っていた。
壁に面してアンティークの大きな両袖机と、肘かけ椅子が置かれ、その隣のサイド机にパソコンとプリンター、そして天井までの高さのある本棚が並んでいる。
『大きい部屋ね。お父様は何のお仕事を？』
若武君は肩をすくめた。
「弁護士」
なるほど、若武くんの話術はお父様譲りなのかもしれない。
そのうちに立花さんもやってきた。
「大学の時の友達が何人か集まって、共同弁護士事務所を作ってるんだ。商社との長期契約で、ニューヨーク支社に配属されたわけ。ま、転勤のようなものだよ。喜んで行っちゃった。大学も向こうだったし」
ソファにいた上杉が、若武君を見た。
「親父さん、アメリカの何大学？」
若武君は親指を立て、机に置いてある大きな写真立てをさす。
そこにはユニフォームを着たフットボール部員が集団で写っていた。
全員が得意げな笑顔だった。
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きょっちー(プロフ) - 天愛さん» ご指摘ありがとうございます！しかしそのシーンでは原作の上杉君もアーヤと言っており、何か意味があってそう呼んでいる可能性もあるため、このままでいかせていただきます。コメントやしっかり読んでくださっているのはとても嬉しかったです。これからもお願いします！ (2020年8月14日 22時) (
レス) id: f1276d6d57 (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 126話の上杉が立花じゃなくて、アーヤって言ってしまってます!確認してみてください(^_^) (2020年8月12日 16時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 麗奈さん» 読んでいただきありがとうございます！夢主ちゃんにとても注目していただき、嬉しいです。ゆっくりではありますが、これからも更新していきますので、これからもよろしくお願いします！ (2019年10月14日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
麗奈 - 私は、夢主のセリフがとても好きです。一歩引いた目線から考えたことがないので、さらに考えが深まりました。私は、黒木君推しなのでとても展開が楽しみです。これからも頑張って書いて下さい。 (2019年10月13日 20時) (レス) id: 2e81cd4f4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きょっちー | 作成日時：2019年8月29日 18時
