20話 ページ5
そう言って黒木君は青く見えるほど澄んだ目の中に、一瞬鮮やかな光を浮かべた。
「高柳真人は、おじである梅津公介のところに引き取られたという話だったが、これはウソだ。梅津は、高柳真人のおじじゃない」
驚く皆を、黒木君は強い視線で見回した。
「梅津は高柳真人の父親なんだ」
上杉君がレンズの向こうの目を光らせた。
「どうしてわかった?」
黒木君は椅子の背から体を起こすと、ジャケットの内ポケットに手を入れて1通の封筒を出した。
「開けて見ろよ」
差し出されて上杉君はそれを取り、開いていた封の中に指を突っ込んで、1枚の紙を引き出した。
途端ツカツカと寄ってきていた若武君が、脇からそれを引ったくって言った。
「これってもしかして戸籍トーホン?」
ここまでできるとは…自分が苦い顔になっているのがわかる。
立花さんと小塚君が何のことかわからずいると、上杉君が溜息をついて二人を見回した。
「戸籍謄本は本人か、その承諾を受けた人間でなくちゃ取ることができないんだ。高柳真人の戸籍謄本を黒木が勝手に取ることは法律に触れてる。つまり犯.罪なんだ。バレたら警察沙汰だぜ。どうやったんだ!?」
上杉君の質問に黒木君は横を向いた。
「犯罪にならない方法で入手した。合法的にだ。やり方はナイショだ。お子さま方がマネすると困るからな」
上杉君が悔しそうにに黒木君の頭を小突き、黒木君はそれを避けて、若武君から戸籍謄本を取り戻した。
「見ろよ」
机の上に広げ、高柳真人の父親の欄を指さす。
そこにははっきりと梅津公介の名前が書いてあった。
「戸籍の筆頭者はすでに死.亡した高柳秀子。母親欄にも同じ名前があるから、これが高柳真人の母親なんだ」
立花さんが首を傾げた。
「筆頭者って普通、父親がなるんじゃないの?」
小塚君も言った。
「父親の名字と子どもの名字が違うのも、可笑しいよね」
黒木君は意味ありげな表情で、両手をハーフパンツのポケットに突っ込んだ。
体を大きく後ろに反らせて、皆を見回す。
「さあ、謎が解けるかな」
皆は顔を見合わせた。
しかし上杉君だけが、切れ上がった目の中で光を瞬かせた。
「そうか…」
やはり上杉君は察しがいい。
若武君が焦れて戸籍謄本の上に両手をつき、黒木君の方に身をのり出して言った。
「はっきり言えよ」
黒木君は慎重に口を開いた。
「こういう場合、現在の民法ではその人間は嫡出ではない子どもだと判断できるんだ」
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きょっちー(プロフ) - 天愛さん» ご指摘ありがとうございます!しかしそのシーンでは原作の上杉君もアーヤと言っており、何か意味があってそう呼んでいる可能性もあるため、このままでいかせていただきます。コメントやしっかり読んでくださっているのはとても嬉しかったです。これからもお願いします! (2020年8月14日 22時) (レス) id: f1276d6d57 (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 126話の上杉が立花じゃなくて、アーヤって言ってしまってます!確認してみてください(^_^) (2020年8月12日 16時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 麗奈さん» 読んでいただきありがとうございます!夢主ちゃんにとても注目していただき、嬉しいです。ゆっくりではありますが、これからも更新していきますので、これからもよろしくお願いします! (2019年10月14日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
麗奈 - 私は、夢主のセリフがとても好きです。一歩引いた目線から考えたことがないので、さらに考えが深まりました。私は、黒木君推しなのでとても展開が楽しみです。これからも頑張って書いて下さい。 (2019年10月13日 20時) (レス) id: 2e81cd4f4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年8月29日 18時