16話 ページ40
『とりあえずあなたは服を着なさい。そのままじゃアレルギーだけじゃなく、風邪もひくわよ』
若武君はそのことを忘れていたのか、大人しくまたパジャマを着だした。
上杉がまだ少し冷たい目で私を射ぬく。
「砂原と番号交換したって、マジか」
『ええ。いい友人になれると思ったからね』
「だとしても不用意に近づく相手じゃないよ」
小塚君も慌てたように言ってくる。
黒木君も少し不満そうに見つめてくる。
この部屋の空気は、完全に砂原君拒否体制だ。
私は立ち上がってゆっくり話し出す。
『私は、目を見ればその人がどういう人物なのか、なんとなく分かるの。真っ先にわかるのは、犯罪に手を染めたことがあるか。高柳君の時も彼の目を見て、話を聞くことにしたの。砂原君の目は犯罪者のものではない。私は彼と仲良くなりたいわ』
それでも皆はまだ納得しきれない様子だった。
『…わかったわ。とりあえずそういう事件があったということは、頭に入れておくわね。少なくとも今回の件に[砂原]の名前が出てきている以上、無関係を貫くのは無理があるっていうのは、あなたたちもわかってるでしょう?』
「…わかった。それでいい」
上杉がそう言い、皆もそれに賛成した。
少し空気の重みが戻ってきたため、わざと軽めに言う。
『それに砂原君程度の体格の人なら、7人同時ぐらいまで私一人で充分勝つことが出来るわ。あっちがキレてきても、私に組伏せられて終わるだけよ』
「いや、それは桜田が凄いだけだと思うけど…」
小塚君が苦笑気味にそう言い、部屋の空気も軽くなってきたとこで、黒木君が口を開いた。
「とりあえず会議は一週間後に回そう。それだけ経てばアーヤの怒りも収まってるだろうから」
上杉が少しげんなりしたように言う。
「女ってめんどくせえ」
『あら、私も女の子よ』
「俺の中でお前は性別云々じゃなく、正体不明の生物ってことになってる」
『酷い言われようね』
その日はそこで解散となった。
「じゃあ、桜田行こう」
『ええ、でも嫌なら別に来なくていいのよ。まだ正式にお付き合いしてるわけじゃないんだし』
「それは時期が少し早まったってだけだよ。桜田を口説き落とせる自信はあるからね」
前を黒木君が自転車で走り、後ろに私がスケボーで続く。
自分でも分かってる。
私がどんどん彼に絆されていってることに。
正式なお付き合いが始まるのも、時間の問題になってきていることに。
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きょっちー(プロフ) - 天愛さん» ご指摘ありがとうございます!しかしそのシーンでは原作の上杉君もアーヤと言っており、何か意味があってそう呼んでいる可能性もあるため、このままでいかせていただきます。コメントやしっかり読んでくださっているのはとても嬉しかったです。これからもお願いします! (2020年8月14日 22時) (レス) id: f1276d6d57 (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 126話の上杉が立花じゃなくて、アーヤって言ってしまってます!確認してみてください(^_^) (2020年8月12日 16時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 麗奈さん» 読んでいただきありがとうございます!夢主ちゃんにとても注目していただき、嬉しいです。ゆっくりではありますが、これからも更新していきますので、これからもよろしくお願いします! (2019年10月14日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
麗奈 - 私は、夢主のセリフがとても好きです。一歩引いた目線から考えたことがないので、さらに考えが深まりました。私は、黒木君推しなのでとても展開が楽しみです。これからも頑張って書いて下さい。 (2019年10月13日 20時) (レス) id: 2e81cd4f4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年8月29日 18時