4話 ページ28
その時、校門の方でどよめきが上がった。
「KZだっ!」
「KZが来たぞ」
校門に目を向けると、そこから自転車に乗った男の子達が続々と入ってくるとこだった。
全員が緋色のウインドブレーカーを羽織っている。
胸には金色のKZのマークが。
「うわぁ、KZだ」
「KZ中等部だぞ」
緋色のウインドブレーカーを翻した自転車集団は、迫力があって誰もが息をのんで見とれていた。
中等部ということは彼らもいるのかしら。
最近皆の予定が合わず、KZリサーチ事務所の方は集まれていない。
黒木君とはたまに会っていたけど。
すると後ろで声がした。
「桜田、アーヤ」
キュッとブレーキの音をさせて、1台の自転車がカーブを描いて目の前に止まる。
「そういえば、アーヤも学校ここだったんだ」
自転車を傾けて長い脚を地面についたのは、黒木君だった。
綺麗なその目に光を煌めかせながら、じっとこちらを見る。
「アーヤ、その制服よく似合うよ。桜田もやっぱり似合うね。それに今日髪型違うんだ。花粉症は酷そうだけど」
母さんは編み込みをしてくれたのだ。
そして私と黒木君は春休み中、お互いの制服姿を見せあっていた。
黒木君に続いていた自転車が次々と急ブレーキをかけて止まった。
「お、黒木がナンパだ」
「お手並み拝見しよーぜ」
冷やかすように言いながら、男の子達は片腕をハンドルにかけ、身をのり出すようにこちらを見る。
とりあえず弁解しようと口を開こうとすると、後ろから猛スピードで走ってきた1台の自転車が、男の子達の間に入りこんで、ジャッと砂を飛ばしながら止まった。
「ナンパじゃねーよ」
そう言いながら地面に片足をついたのは上杉だった。
「知り合いなんだ」
縁のない眼鏡の向こうの目には、相変わらず冷たい光が瞬いていた。
「皆散れよ。コーチに怒鳴られたいのか」
男の子達は仕方なさそうに足をペダルにのせ、次々と立ち去った。
「黒木もだ。行け」
黒木君は少し笑って、片目を瞑った。
「じゃあまたね」
斜めになっていた自転車を立てて、漕ぎ出していく。
上杉はその後を追っていこうとして、ふっとこちらを振り返った。
「あのさ」
そう言いかけて、急に驚いたような顔つきになった。
「砂原…」
上杉の視線の方向を追って振り返ると、私達の後ろの方を砂原君が通りかかるところだった。
「よっ!」
そう言って砂原君は片手を上げ、そのまま通りすぎていった。
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きょっちー(プロフ) - 天愛さん» ご指摘ありがとうございます!しかしそのシーンでは原作の上杉君もアーヤと言っており、何か意味があってそう呼んでいる可能性もあるため、このままでいかせていただきます。コメントやしっかり読んでくださっているのはとても嬉しかったです。これからもお願いします! (2020年8月14日 22時) (レス) id: f1276d6d57 (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 126話の上杉が立花じゃなくて、アーヤって言ってしまってます!確認してみてください(^_^) (2020年8月12日 16時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 麗奈さん» 読んでいただきありがとうございます!夢主ちゃんにとても注目していただき、嬉しいです。ゆっくりではありますが、これからも更新していきますので、これからもよろしくお願いします! (2019年10月14日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
麗奈 - 私は、夢主のセリフがとても好きです。一歩引いた目線から考えたことがないので、さらに考えが深まりました。私は、黒木君推しなのでとても展開が楽しみです。これからも頑張って書いて下さい。 (2019年10月13日 20時) (レス) id: 2e81cd4f4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年8月29日 18時