26話 ページ11
食器棚を開けると、少し奥に蠟色のマグカップが見えた。
黒木くん専用に買ったものだ。
最近使われていないからか、それは少し埃を被っていた。
それが何となく嫌で、マグカップを丁寧に洗って食器棚の手前に置いた。
※※※
会議から3日経った朝早くに、若武君からメールが来た。
[新展開だ。上杉と黒木が報告することがあるってさ。かなり有力な情報みたいだぜ。今日、特別クラスに来いよ]
特別クラスに入ると立花さん以外は来ていて、立花さんもすぐにやって来た。
「さあ、始めるぞ」
そう言って、ピストルの形にした右手を上杉君に向け、片目を瞑って狙いを定める。
「上杉、お前からだ」
バンと引き金を引いた若武君に、上杉君はチラリと冷たい視線を流して、皆の方に向き直った。
「去年、高柳真人はまだ健康だった母親と二人で、母方の田舎であるドイツのに旅行している。彼の母親はドイツ人と日本人のハーフで、彼はクォーターだ。その実家の近くに鉱山があり、そこから採れる鉱石の中の一つにヒ石がある。ヒ石には多量の亜ヒ酸が含まれているんだ。高柳真人はそれを持ち帰ってきたのかもしれない。とすれば彼は、どこかでヒ石を精製して亜ヒ酸を作ったということになる。彼の祖父はドイツで医者をしているそうだから、そこから知識を得ればできないことじゃない。俺の報告は以上だ」
上杉君が口をつぐむと、代わって黒木君がが、ギシッと椅子を揺すって身を起こした。
両腕を机の上について皆を見る。
「俺は2日間、高柳真人をつけた。あいつは母親と一緒に住んでいたマンションに、今も時々出入りしてる。まあまだ買い手はついてないんだから、出入りする権利はあるわけだけどね。不動産屋の話では、荷物の一部もまだ置いてあるってことだった。話が面白くなるのはこの先なんだけど、俺達があのキーホルダーを見つけた日、このマンションではとんでもないことが起こっていたんだ。何だと思う?」
そう言って黒木くんは、立花さんを覗き込むが、立花さんは首を横に振った。
「わからない」
黒木君は微笑みを浮かべた。
「警察が高柳真人の部屋に来てたんだ」
立花さんは驚いたように叫ぶ。
「どーしてっ!?」
「マンションの住人が警察に通報したからさ。あの空き部屋から異様な臭いがするって。知っての通りあのマンションは管理人がいない。で、連絡を受けた警察は不動産屋を通して持ち主である高柳真人に事情を聞こうとした。ところが、あいにく彼はいなかった」
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きょっちー(プロフ) - 天愛さん» ご指摘ありがとうございます!しかしそのシーンでは原作の上杉君もアーヤと言っており、何か意味があってそう呼んでいる可能性もあるため、このままでいかせていただきます。コメントやしっかり読んでくださっているのはとても嬉しかったです。これからもお願いします! (2020年8月14日 22時) (レス) id: f1276d6d57 (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 126話の上杉が立花じゃなくて、アーヤって言ってしまってます!確認してみてください(^_^) (2020年8月12日 16時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 麗奈さん» 読んでいただきありがとうございます!夢主ちゃんにとても注目していただき、嬉しいです。ゆっくりではありますが、これからも更新していきますので、これからもよろしくお願いします! (2019年10月14日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
麗奈 - 私は、夢主のセリフがとても好きです。一歩引いた目線から考えたことがないので、さらに考えが深まりました。私は、黒木君推しなのでとても展開が楽しみです。これからも頑張って書いて下さい。 (2019年10月13日 20時) (レス) id: 2e81cd4f4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年8月29日 18時