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16話 ページ10

「お待たせ。この家か?」

若武君は両手をハーフパンツの後ろポケットに突っ込みながら、眩しそうに目を細めて灰色のストレートの屋根を見上げた。

私が以前来た家だ。

「家族構成まで調べた?」

黒木君が頷く。

「世帯主は加藤行利、妻和美、それに1歳6か月の純だ」

1歳…あの赤ちゃんもそれくらいだった。

やはり間違いないのだろう。

「これからどうする?」

若武君の質問に、黒木君は軽く笑った。

「まさかインターホンを押して聞くわけにもいかないだろ」

言いながら、ポケットから黄色いテニスボールを出す。

「これを投げこんで、拾わせてもらう。その間に家の中の様子を見たり、加藤行利と話をしたりして、手掛かりになりそうなことを聞き出すんだ」

小塚君が、顔をしかめて家を眺め回した。

「じゃ、簡単には捜せないところに投げこまないとだめだよ。時間が稼げない」

上杉君が、中指で眼鏡を押し上げる。

「建物の向こう側が庭になっている。木がたくさんあるから、その間に入れよう」

「よしっ!」

元気よく若武君が言って、黒木君の手からボールを引ったくった。

「オレがやる」

「待てよ」

黒木君が若武君の肩を掴んで止め、片手で屋根の上を指す。

「あの天窓のついた小屋根は相当高い。ここから投げて、あれを越してその向こう側の木の間に突っ込むのは無理だ」

「できるさ」

頑として言いはる若武君に、黒木君は、きっぱりと首を振った。

「だめだ。同じ手は2度使えない。絶対に失敗できないんだ。安全なセンで行こう」

若武君は少しムキになった。

「大した高さじゃねーよ。せいぜい6メートルくらいだ。絶対できる」

黒木君も譲らない。

「いや、8メートルはある」

睨み合う2人に、立花さんと小塚君は顔を見合わせた。

私は上杉君に目配せしてみる。

「じゃ、あの小屋根の高さを計ろう」

私の意を汲み取ってくれたのか、上杉君はそう言い出した。

「設計士でも呼んでくるのか?」

息を呑んで聞いた若武君に、上杉君は、突きつけるように言った。

「あの高さが6メートルなら、お前がここからボールを投げてもいいよ。だが、もしそれ以上あったら、黒木の言う通り別の方法にするんだ。いいな」

若武君が仕方なさそうに頷いたので、私は上杉君に二等辺の三角定規を渡す。

若武君がはっとしたような顔でつぶやく。

「あ、相似か!」

上杉君はわずかに笑って家に向かって立ち、三角定規を顔の前に上げた。

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きょっちー(プロフ) - レイさん» コメントありがとうございます!惚れましたなんてそんな(///∇///)ありがとうございます!これからも読んでくださいね〜 (2019年8月8日 19時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 甘納豆さん» 返信遅くなってごめんなさい!ありがとうございます。これからも頑張っていきます! (2019年8月8日 19時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
レイ - きょっちーさん» この小説を読んだ瞬間貴女に惚れました←w 更新頑張って下さい! (2019年8月8日 18時) (レス) id: fd2024614f (このIDを非表示/違反報告)
甘納豆(プロフ) - めっちゃ面白いです!更新頑張ってください!楽しみに待ってます! (2019年8月7日 20時) (レス) id: a4b65807ec (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ちーさん» コメントありがとうございます!頑張っていくので、待ってて下さいね♪ (2019年8月6日 12時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月24日 15時

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