14話 ページ8
「ページの切り口を顕微鏡で調べてみたけれど、繊維の切断面がピッタリ揃っているところから見て、犯人が使ったのはハサミか、カッターも含めたナイフだ。本に残っているページの幅の少なさや、切断部分に押し切られたような跡がないこと、切断線がまっすぐなことを考えあわせると、ナイフとスケールとを使った可能性が強い。それもかなり鋭くて刃の薄い、特殊なものだ。世界のナイフのカタログがあったら見てみたいんだけれど、黒木、捜してきてくれる?」
黒木君はすぐ頷いた。
彼は物でも人でも、何でも手に入れてくる。
「それから、綴じ込みを剥がしていたら、間からこんなものが出てきた」
言いながら小塚君は、胸ポケットから、畳んだティッシュを出した。
丁寧に開けられたその中には、透明な欠片が入っていた。
爪の先ぐらいの大きさで、薄さは1ミリもない。
「何だ、それ」
若武君は好奇心で顔を輝かせ、小塚君自身もとても興味深そうにそれを見つめる。
「接着剤の乾いたものだと思う。でも、本の綴じ込みに使われていたのとは違う種類だし、その辺に売ってるものでもない。多分、特殊な糊だ。犯人とは関係ないかもしれないけれど、一応分析してみるよ。黒木、糊の成分表を表示した商品カタログも、頼む」
「オッケ」
その日はそこで解散となった。
いつも通り黒木君と帰る。
会話の始まりは私だったり彼だったりバラバラだけど、今日は私からだった。
『加藤家捜しに、ナイフと糊のカタログ。1人で大丈夫なの?大変なら手伝うわよ』
「ありがとう。でも大丈夫、ナイフと糊の方はアテがあるから」
黒木君のコネは、本当に感心させられる。
とても小学生の持っているものとは思えない。
『やっぱり流石ね。物でも人でも、何でもすぐ手に入れちゃうんだから』
私がそう言うと、黒木君が急に立ち止まった。
振り返ると、彼は少し俯いていてはっきりと表情が読めない。
「そんなことないよ。だって…一番欲しい人は中々手に入れられそうにないから」
私達の間に暫く沈黙が走った。
顔を上げた黒木君は、いつもより悲しげで寂しげな笑顔だった。
「…帰ろっか」
『…ええ』
その後は、私達の間に会話はなかった。
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きょっちー(プロフ) - レイさん» コメントありがとうございます!惚れましたなんてそんな(///∇///)ありがとうございます!これからも読んでくださいね〜 (2019年8月8日 19時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 甘納豆さん» 返信遅くなってごめんなさい!ありがとうございます。これからも頑張っていきます! (2019年8月8日 19時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
レイ - きょっちーさん» この小説を読んだ瞬間貴女に惚れました←w 更新頑張って下さい! (2019年8月8日 18時) (レス) id: fd2024614f (このIDを非表示/違反報告)
甘納豆(プロフ) - めっちゃ面白いです!更新頑張ってください!楽しみに待ってます! (2019年8月7日 20時) (レス) id: a4b65807ec (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ちーさん» コメントありがとうございます!頑張っていくので、待ってて下さいね♪ (2019年8月6日 12時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月24日 15時