12話 ページ6
「こいつは、前の事件よりよっぽどデカいぜ。立花、捜査会議の記録をとれよ」
「ねえ、警察に届けたほうがよくないかなあ」
小塚君が言って、私達を見回した。
「誘.拐だったら、前の事件とちがって命に関わることだろ。早くしないと危ないかもしれない」
その意見で考えられるのは二つ。
脅.迫状通り一年後に帰すつもりで生かしているか、もうすでに手遅れか。
とにかく手遅れでないことを願うばかりだが、しかし…。
「まあ、待てよ」
上杉君が言って、椅子の背もたれから体を起こす。
組んだ腕を机の上に置きながら、涼しげな光を浮かべた目で、私達の1人1人を見た。
「もし誘.拐が本当なら、なぜ犯人は、そんな重要な手がかりの残る本を、わざわざ図書室に戻したんだ?黙って捨ててしまえば済むことじゃね?」
そう、まだこの段階ではあまりにも謎が多すぎる。
若武君が、悔しそうに片目を細めて呟く。
「じゃ、ただのいたずらってことか?」
上杉君は、慎重に答えた。
「かもしれない」
後ろで黒木くんがクスッと笑った。
「アーヤ、残念そうだね。君も、でっかい事件を期待してたわけ?」
立花さんは、慌てて首を横に振った。
「そんなんじゃない。もしいたずらだとしたら、今日、この脅.迫状を再現するまでにかかった私の時間は、いったいなんだったのかなって思って、空しくなっただけ。」
すると若武君が、片手で黒板をバンと叩いた。
「そうだ。これを再現させた立花の努力を無駄にしちゃいけない!つまりこうだ。俺達は、これから誘.拐が本当に行われたかどうかを、脅.迫状が本物なのかどうかを確かめるんだ。探偵事務所の名誉にかけて、真実を突き止めよう!な、そうしようぜ!!」
若武君の言葉は、人の心を煽る。
皆そのつもりになってしまって、誘.拐についての捜査を開始することが決まった。
それを見て若武君はニヤッと笑った。
大方、今の若武君の頭の中はうまく事件を解決し、新聞やテレビの取材陣に派手に取りまかれている自分の姿でいっぱいだろう。
しかし、慌ててキビキビとした表情を取り戻し、黒板に向き直った。
「まず、わかっていることを整理しよう」
そう言いながら、カタカタとチョークを持った手を動かす。
「被害者は、加藤行利、もしくは利行の子ども。特徴、年齢は、不明。犯行場所、不明。犯行動機、不明」
その声は、次第に不愉快そうな響きを含んでいき、やがて若武君はブスッと膨れてチョークを放り出した。
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きょっちー(プロフ) - レイさん» コメントありがとうございます!惚れましたなんてそんな(///∇///)ありがとうございます!これからも読んでくださいね〜 (2019年8月8日 19時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 甘納豆さん» 返信遅くなってごめんなさい!ありがとうございます。これからも頑張っていきます! (2019年8月8日 19時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
レイ - きょっちーさん» この小説を読んだ瞬間貴女に惚れました←w 更新頑張って下さい! (2019年8月8日 18時) (レス) id: fd2024614f (このIDを非表示/違反報告)
甘納豆(プロフ) - めっちゃ面白いです!更新頑張ってください!楽しみに待ってます! (2019年8月7日 20時) (レス) id: a4b65807ec (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ちーさん» コメントありがとうございます!頑張っていくので、待ってて下さいね♪ (2019年8月6日 12時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月24日 15時