31話 ページ25
立花さんは軽く頷き、若武君に近づく。
立花さんが声をかけるのを見届けて、診察室に入った。
※※※
歯科検診は、何事もなく終了。
私が診察室から出るのと同時に、黒木君の声が聞こえてきた。
「今もそれらを使ってるんですか?」
立花さん、黒木君と話していたらしい看護師さんは、首を横に振った。
「いいえ。もっと自分の手に合ったものを見つけたから、始めに使っていたのはこれから始めたいって人にプレゼントしたの」
立花さんは大声で聞いた。
「それは誰っ!?」
看護師さんはさすがに怪訝そうな顔になりながら答えた。
「ここのお嬢さんよ」
やはり、あの女は金沢誠くんの血縁者だった。
「ありがとうございました」
黒木君が言うが、看護師さんは何か言おうとしたので、間に割って入る。
『お会計、お願いします』
そう言われるとどうしようもないのか、看護師さんは二人から視線を外した。
その間に、二人がここから飛び出していった。
診察料を払い、外に出ると門のところに、若武君以外の全員が揃っていた。
黒木君が私に気づいた。
「このまま金沢誠の家に直行する。すぐ隣に玄関がある」
そうして私の後ろの存在に気づき、立ち止まった。
「生贄を忘れてきた」
何のことかわかってないまま、皆は黒木君の視線の方向を追った。
ちょうど、若武君がバッシュをつっかけながら出てきたところだ。
目や頬は真っ赤だった。
相当我慢してきたらしい。
黒木君は、ニヤッと笑った。
「犠牲者に敬意を払おうぜ。リーダー若武に敬礼っ!」
若武君の好きそうな派手な言葉を選んで黒木君が言い、私達はそれに合わせてピシッと姿勢を正す。
今は外にいるから、挙手注目の敬礼だ。
若武君は、今にも泣きだしそうだったその顔に、わずかに笑みを浮かべ、満足そうに頷きながら、いつも通りにカッコをつけて言った。
「ご苦労」
※※※
「それは、アネキのことだと思うな」
金沢誠君は、そう言った。
「アネキはずっと診療所を手伝ってたんだけれど、去年の暮れにうちで雇ってた歯科医の1人と結婚して、東京に行ったんだ。でも、うまくいかなくて夏ごろ離婚して家に帰ってきて、また診療所を手伝ってた。凄くオチこんでたから看護師さんたちも色々気を遣ってたらしいよ。それでも一向に元気にならなくて、親がいつまでもこのままじゃ仕方ないからって、とりあえず近くに家を借りて、気分を変えさせることにしたんだ。で、ごく最近引っ越してったんだけど」
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きょっちー(プロフ) - レイさん» コメントありがとうございます!惚れましたなんてそんな(///∇///)ありがとうございます!これからも読んでくださいね〜 (2019年8月8日 19時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 甘納豆さん» 返信遅くなってごめんなさい!ありがとうございます。これからも頑張っていきます! (2019年8月8日 19時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
レイ - きょっちーさん» この小説を読んだ瞬間貴女に惚れました←w 更新頑張って下さい! (2019年8月8日 18時) (レス) id: fd2024614f (このIDを非表示/違反報告)
甘納豆(プロフ) - めっちゃ面白いです!更新頑張ってください!楽しみに待ってます! (2019年8月7日 20時) (レス) id: a4b65807ec (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ちーさん» コメントありがとうございます!頑張っていくので、待ってて下さいね♪ (2019年8月6日 12時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月24日 15時