27話 ページ21
皆は一気に緊張し、直後にドアに突進してそこから飛び出していった。
私もゆっくり図書室に向かった。
先頭に立っていた若武君が図書室のドアを開けると、中には4〜5人の生徒がいた。
ただ1人を除いて皆女子だったので、すぐに金沢誠くんがわかった。
ちょうどカウンターの上に自分の借りたい本をのせ、有田先生がその書名をカードに書き取っているところだった。
上杉君が、嘲るように呟いた。
「見ろよ。なかなかシャレた手だぜ」
黒木君もくすっと笑った。
「想像はついてたよ。どうする?」
「やっぱり若武先生の出番だろう」
からかい半分で上杉君がそう言うのと、若武君が大きなストライドでカウンターに歩み寄り、金沢誠君の肩に手をかけるのが同時だった。
金沢誠君はビクッとして振り返り、持ち上げようとしていた大判の本を素早く手元に抱え込む。
瞬間、その本の間から1冊の文庫本が滑り落ちて、床の上でバサリと音を立てたのだった。
皆が一瞬息を呑み、金沢誠くんは立ち竦んで、落ちつきなく私たちの顔色を伺った。
図書室に沈黙が立ちこめ、黒木君の声が女の子達に向かって、優しく響く。
「ねえ君達、悪いんだけど、これから本棚の整理をしなけりゃならないんだ。また明日来てくれる?」
微笑んで言いながらさりげなく女の子たちを追い出し、バタンとドアを閉めてこちらを見た。
「さてと」
艶やかな黒い目を光らせてゆっくりとカウンターに歩み寄り、金沢誠君の足元から文庫本を拾い上げる。
「借りる本の中に別の本を挟みこむ。カウンターに出すときは、有田先生の方に本の背表紙を向け、自分で反対側を押さえている。そうすれば有田先生は、本を手に取らずに書名を書き写すし、背表紙を見ているだけだから、中に別の本が隠されて多少膨らんでいても、気づかない」
金沢誠君は大きく息をつき、バサバサッと髪を掻き上げた。
「悪かったよ」
すっかり降参したといった様子だったけれど、少しばかりフテくされた感じも入り交じっていた。
「この図書室って一冊だけしか借りられないから、もの足りないんだ。だけどきちんと返してるんだから、いいだろ」
小塚君が、この間から持ち回しているあの雑誌を出す。
「このページを切り取ったのは、君?」
金沢誠君は、驚いたようだったけれど、それより有田先生の驚きの方が大きかった。
「ちょっと…、ひどい!」
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きょっちー(プロフ) - レイさん» コメントありがとうございます!惚れましたなんてそんな(///∇///)ありがとうございます!これからも読んでくださいね〜 (2019年8月8日 19時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 甘納豆さん» 返信遅くなってごめんなさい!ありがとうございます。これからも頑張っていきます! (2019年8月8日 19時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
レイ - きょっちーさん» この小説を読んだ瞬間貴女に惚れました←w 更新頑張って下さい! (2019年8月8日 18時) (レス) id: fd2024614f (このIDを非表示/違反報告)
甘納豆(プロフ) - めっちゃ面白いです!更新頑張ってください!楽しみに待ってます! (2019年8月7日 20時) (レス) id: a4b65807ec (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ちーさん» コメントありがとうございます!頑張っていくので、待ってて下さいね♪ (2019年8月6日 12時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月24日 15時