19話 ページ13
「さてと、」
バス停に向かって歩き出しながら、若武君が私達を見回した。
「誘.拐はあったか?」
すかさず上杉君が言う。
「あった」
立花さんも言った。
「絶対、誘拐されてると思う」
小塚君も頷く。
若武君は、その目に慎重な光を浮かべた。
「理由は?」
「洗濯物が子どもの分だけなかったから」
それじゃあ弱い。
黒木君が、ポーンとボールを投げ上げる。
「子どもをどこかに預けてるのかもしれない。田舎とかさ」
上杉君が静かに口を開いた。
「母親は2階にいたぜ。病気って風でもなかった。1歳の子どもを、健康な母親から離して親類や他人に預けるなんてこと、普通はしないよ。忙しい仕事でどうしようもないっていうんならともかく」
小塚君が首を横に振る。
「あの家の奥さんが忙しいなんてことないよ。勤めも休んでるし、外出もしてないから。きっとショックなんだ」
「そんなこと…どうしてわかるの?」
小塚君は、得意そうに微笑む。
「靴箱に子どもの靴があって、内側にマジックで、池端保育園って書いてあった。池端保育園は、市立だ。市立の保育園は、けっこう規則がうるさい。奥さんは、どこかの会社に勤めているはずだ。あと一つ、このところ雨が続いているからご主人の靴のいくつかは湿ってた。でも奥さんのは、全部綺麗に乾いていた。だからずっと外出していない」
小塚君の観察眼は、やはり素晴らしい。
「保育園だったら誘.拐はしやすいよな」
若武君が呟く。
「迎えに行く時間に親より先に行って、頼まれて来ましたって言えばいいんだ」
黒木君も同意した。
「その前に保育園に一本、電話を入れとけばもう完璧さ。きちんと名前を名乗って、加藤家の親類だとか職場の同僚だとか言って、いつもお世話になってますなんて挨拶もしっかりしてから、徐に親から頼まれましたから何時に迎えに行きますって言って、その時間通りに行けば、大抵は騙せるよ」
その説明が、誘.拐の常套手段そのものだったので、私はつい言ってしまった。
『まるでしたことあるみたいね』
黒木君は少し笑った。
「されたことがあるんだ」
皆が一斉に黒木君を見、大声で言った。
「すっげぇ。カッコいい!」
この子たちは本当に…呆れるしかない。
「じゃ誘.拐は、あったとしよう」
若武君が両手をハーフパンツの後ろポケットに突っ込みながら、バス停の前の石垣によりかかった。
「加藤行利は、警察に知らせたかな」
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きょっちー(プロフ) - レイさん» コメントありがとうございます!惚れましたなんてそんな(///∇///)ありがとうございます!これからも読んでくださいね〜 (2019年8月8日 19時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 甘納豆さん» 返信遅くなってごめんなさい!ありがとうございます。これからも頑張っていきます! (2019年8月8日 19時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
レイ - きょっちーさん» この小説を読んだ瞬間貴女に惚れました←w 更新頑張って下さい! (2019年8月8日 18時) (レス) id: fd2024614f (このIDを非表示/違反報告)
甘納豆(プロフ) - めっちゃ面白いです!更新頑張ってください!楽しみに待ってます! (2019年8月7日 20時) (レス) id: a4b65807ec (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ちーさん» コメントありがとうございます!頑張っていくので、待ってて下さいね♪ (2019年8月6日 12時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月24日 15時