49話 ページ49
おじ様が桜の木を見上げながら、話し始めた。
「ここで、おまえの母さんに会ったんだ」
※※※※
桜が満開の季節、ヴェスパニア・クラウンを片手に持ったルパンの前に、まだ王女であるサクラが立っていた。
「お願い、クラウンと一緒に私も盗んで!籠の中の鳥はイヤ、大空を羽ばたきたいの!」
「そいつはできねぇ相談だ」
微笑みながら言ったルパンに、サクラ王女は詰め寄る。
「どうして?」
「いいか。オレのじい様が大泥棒だったみてぇに、あんたの親はこの国の王様だ。行く行くはあんたもこの国を治めなきゃならねぇ。こいつを被ってな。オレとじゃなく、この国の国民と大空を羽ばたくんだ」
そう言いながら、ルパンはサクラ王女の頭にそのクラウンを乗せた。
「ルパン…」
「じゃあな。この国があんたのお蔭でいい国になったら、その時はまた盗みに来てやっから」
※※※
「今のおまえさんに、そっくりだったぜ」
メル王子が、どこか実感してないような声で言う。
「しっかり者のお母様が、オレみたいな時があったなんて」
「そんな約束、すっかり忘れちまってたけどな。サクラが死んじまったって聞いたときに思い出したのさ」
そう言って、どこからかヴェスパニア・クラウンを取り出した。
『おじ様、泥棒は犯罪よ』
そう言った私に、面白くなさそうな表情を向けてきた。
「オレじゃねぇよ。盗ったのはバイクのお姉さんだよ」
『仲間なんでしょう?』
「うるっせぇな、おまえ。こうすりゃいいんだろ?」
メル王子に歩み寄り、その頭にクラウンを乗せた。
「こいつは返すぜ。やっぱおまえの頭の上が、一番お似合いだよ」
おじ様はズボンのポケットに両手を入れて、私の方を振り返った。
「所で嬢ちゃん、一つ聞いていいか?どうしてサクラが撃たれたのが、事故じゃないって思ったんだ?おまえの[パパ]が言ってたぞ。ここを調べた時から、おめぇは決めてたって」
私は再び視線を桜に戻した。
『それは、あの折れた枝よ』
メル王子が不思議そうな声で問いかける。
「あの枝が?」
『ジル王子もお母様が、この桜をお好きだったって知ってたはずですよね』
「ああ」
『それなら、その大事な桜の木に銃を向けたりしないだろうって』
おじ様が歩いて、私の隣に立った。
「なるほど。それで撃ったヤツは王子じゃねえと」
私はそのたくさんの花に向かって微笑んだ。
『桜が知っていたのよ』
皆で桜に見入っていると、唐突に思い出した。
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月(ユエ)(プロフ) - はじめまして✨警察官でしたシリーズ、全て読みました!もしかしてシリーズ14以降は執筆しない予定ですか?とっても面白い話なのでもっと見てみたいなというのが本音です。私も小説を書いたりするので、書き方とても参考になりました!ありがとうございます!(´▽`) (4月20日 15時) (レス) id: 554e8a3ec4 (このIDを非表示/違反報告)
あんな - はじめまして!警察官でしたシリーズ、とても面白くて1日で読破してしまいました!私も黒木くん大好きです!我慢しすぎちゃう桜田ちゃんと心配して怒る黒木くんが最高です!これからの黒木くんとの恋模様、楽しみにしてます! (2021年3月10日 19時) (レス) id: 8be13c14ce (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» すみません!忘れていただけで、ルパコナ1は終わっています。2は展開的に書けるようならいつか書ければ…という感じです。しかし、コナンコラボは続きます。今も執筆中ですので、そちらを楽しみにしていただければ嬉しいです! (2020年7月5日 21時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 続く・・・って、完結じゃ、ないんですか?まだ続くのなら、楽しみにしています。 (2020年7月5日 17時) (レス) id: daa172df0e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます!私も書いてみたいお話だったので、とても楽しかったです。最後がおかしくなってしまいしたが…。またお気軽にコメントしてください! (2020年6月21日 20時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年6月21日 12時