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32話 ページ32

すると誤作動を起こしたのか、自販機は飲み物とコインを大量に吐き出し始めた。

「うあぁっ!そんなチップまでサービスしてくんなくたって」

大げさに驚きながら、出てきた缶を3本ほど抱え始める。

Aはそんなルパンに呆れたように声をかけた。

『おじ様、泥棒はダメよ』

それで気づいたらしく、ルパンはAに目を向けた。

「ん?人聞き悪いぞ、嬢ちゃん。ちゃんとお金入れたでしょ?」

『一つ分ね』

「いいじゃん!こいつが持ってけって言うんだからさ」

そう言ってもう1本持ったルパンに、Aは続ける。

『本当に悪い人なの?おじ様、そんな風には見えないわよ』

ルパンは再びAの方を見て、わざとらしく目付きを鋭くした。

「気を付けな。悪い泥棒だったりするぞ」

Aは不敵な笑みを浮かべる。

『そう。おじ様、それで胸のホルスターに拳銃入れてるのね』

少し反応を示したルパンに、Aは続ける。

『左肩が少し下がっているから、そうかもって』

ルパンは素早く胸元から、仕舞っていたものを取り出した。

Aもとっさに後ろへ飛び退く。

「はい、チーズ!」

そう言ってルパンは、取り出したビデオカメラのボタンを押した。

「残念だったね。ビデオカメラだったの」

Aは一瞬呆けた後、口許に手を当てて笑った。

『ふふ、ごめんなさい。本当に悪い人かと思っちゃったわ。よかったわ、本当に悪い人にあんなこと言ったら、危ないものね』

Aはコインの山に次元からもらったコインを置き、アイスティーを1本持って歩き始めた。

そんな背中にルパンは大声で言う。

「おい、1本でいいのか?もっと持ってけよ。共犯友だちしようぜ!」

Aは前を向いたまま、軽く手を上げた。

『泥棒はダメよ』

「何だあの嬢ちゃん。友だち少ねぇな?」

ルパンはコーヒーとコーラを取り、上着のポケットに入れて立ち去った。

しかしまたすぐに戻ってきて、コインの山の上に1枚コインを乗せた。

「ちゃぁんと2本分置いたかんな!」

※※※

おじ様のそんな声を聞きながら、私は角を曲がった。

ふらりと近くの壁にもたれかかった瞬間、ドッと冷や汗があふれ出る。

何なの、あの人。

気配自体は完全に犯罪者のそれ。

なのに目に犯罪の色は無い。

本質の見えない人、そんなのは少なくとも今の私では初めてだ。

正体が分からないからこその、漠然とした恐怖。

あの人は、一体…。

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月(ユエ)(プロフ) - はじめまして✨警察官でしたシリーズ、全て読みました!もしかしてシリーズ14以降は執筆しない予定ですか?とっても面白い話なのでもっと見てみたいなというのが本音です。私も小説を書いたりするので、書き方とても参考になりました!ありがとうございます!(´▽`) (4月20日 15時) (レス) id: 554e8a3ec4 (このIDを非表示/違反報告)
あんな - はじめまして!警察官でしたシリーズ、とても面白くて1日で読破してしまいました!私も黒木くん大好きです!我慢しすぎちゃう桜田ちゃんと心配して怒る黒木くんが最高です!これからの黒木くんとの恋模様、楽しみにしてます! (2021年3月10日 19時) (レス) id: 8be13c14ce (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» すみません!忘れていただけで、ルパコナ1は終わっています。2は展開的に書けるようならいつか書ければ…という感じです。しかし、コナンコラボは続きます。今も執筆中ですので、そちらを楽しみにしていただければ嬉しいです! (2020年7月5日 21時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 続く・・・って、完結じゃ、ないんですか?まだ続くのなら、楽しみにしています。 (2020年7月5日 17時) (レス) id: daa172df0e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます!私も書いてみたいお話だったので、とても楽しかったです。最後がおかしくなってしまいしたが…。またお気軽にコメントしてください! (2020年6月21日 20時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年6月21日 12時

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