警察官でした。〜探偵たちの鎮魂歌〜

39話 ページ39

「それだけでは、まだどっちがスナイパーかわからへんかったけど、こいつのチームメイトが見つけた証人の言葉を聞いて、わかったんや。
【トイレからカランカランっちゅう金属音が数回した後、アンタがゴルフバッグを背負って慌てて出てきた】っちゅう証言をな」

『金属音は薬莢がタイルに落ちる音。
それが数回したということは、乱射したのはあなたの方』

「つまり、スナイパーは清水麗子で、乱射して椅子の脚撃ち抜いて西尾こかして殺.した気ィなってんのは、アンタの方やっちゅうこっちゃ」

『ゴルフバッグの中身はチャーターアームスAR7。
犯行前、あなたはそのバッグを清水麗子から手渡された…、違うかしら』

私がたずねると、伊東は前を向いたまま口を開いた。

「た、確かにそうだが…、それで何で麗子が撃ったと…」

「ライフルのスコープに残ってたんや。
清水麗子がつこてるレアもんのマスカラがな」

「そ、そんなバカな…」

『彼女からバッグを受け取り、トイレで弾を撃ちつくしたあなたは、車ごとライフルを始末しようと埠頭に向かった』

「多分アンタの車いじって転ばしたんも麗子やろな」

『動機はおそらく、現金輸送車を襲って奪った金の独り占め』

私の言葉に、伊東がハッと息を飲む。

「彼女も乗ってたんやろ。襲撃したとき、車ン中に」

伊東は答えなかった。

『その逃走中に怪盗キッドと遭遇し、顔を見られたあなたたちはキッドの口を封じようとして、逆に曲がりくねった裏道に誘い込まれ焦って発砲した。
その裏道に残ってたそうよ。
ガバメントとライフルの薬莢がね』

私が言うと、服部くんがハハ…と笑った。

「どんだけ運転が上手なヤツでも、曲がりくねった裏道を片手で運転しながら、空飛んでるキッドめがけて拳銃やライフルを撃たれへんわ」

『つまり、あなた以外にもう二人らライフルとガバメントを持った人物…清水麗子と西尾正治が乗ってたってことよ』

私たちの推理を黙って聞いていた伊東は、ひじ掛けに手を乗せたままガックリとうなだれた。

「まぁ、この推理につこた証拠のほとんどは警察から聞いたもんで、チームメイトが見つけた証人も、警察やったらもっと早よ見つけられるやろから、警察はこの真相がわかって清水麗子に目ェつけたんやと思うで」

『そう、この事件には最初から必要なかったのよ、名刑事も名探偵もね』

「さぁ、謎は解けたで」

『みんなのIDを外してください』

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