504話 ページ8
「わからない。スグトールって書いてあったと思うけど」
貴和がすぐ携帯を出し、それを入力して検索した。
「スグトールって、鼻炎薬だ」
「黒木」
小塚くんが突然、熱っぽい、かすれた声を出した。
「その成分、検索して」
貴和は片手で携帯をあやつり、スグトールの成分を読み上げた。
小塚くんは耳を傾けていたが、やがて貴和が、
「塩酸プソイドエフェドリン」
と言った瞬間、大声を上げた。
そして私も。
「わかった!」
『わかったわ』
「あそこに赤リンがあったわけ。
それにビーカーや電気コンロが置いてあったことも、小さな屋根裏部屋なの換気扇が2つもあった理由も、あの家全体がどことなく臭かったわけも、これで全部、説明がつく。
そういうことだったんだ」
判明した真実に夢中の小塚くんの代わりに、私が話す。
『塩酸プソイドエフェドリンというのは、血管を収縮させ、気管支を拡張させる働きなんかを持っていて、風邪薬にも使われるものなんだけれど、実は覚醒.剤の原料なのよ。
鼻炎薬の中に入っている塩酸プソイドエフェドリンを結晶させて抽出し、精製すれば覚醒.剤を作ることができるわ』
「そうなんだ。
そのためには赤リンと反応させたり、加熱したりする必要があるんだ。
その作業中は異臭が出るし、換気が必要なんだよ。
吸いこんだら本人も危ないからさ」
『きっと2つとも、ネットで販売してるんじゃないかしら』
まさか、ここまでずっぽり関わることになるとはね。
皆はあまりにも大きな事件に、顔を見合わせた。
ただ和臣だけが、ものすごく元気だった。
「よし、この事件の犯人は、佐藤氏で決まりだ」
その声には、うれしくてたまらないといったような響きがこもっていた。
「自転車を取ってきて、待ち伏せて、佐藤氏が出てきたら後をつけて、家を確かめよう」
和典が、アゴで駐車場を指す。
「車で来てるぜ。チャリンコじゃ無理だ」
貴和が少し笑った。
「アーヤの家の近くのドラッグストアに現れたんなら、その付近に住んでる可能性が高いよ。
ここからそのあたりまで、6人で分散して待機し、携帯で連絡取りあって追えば、何とかなる。
その前に、オレ、家に戻って住宅地図を持ってくるから。
あれに、住宅所有者の苗字が全部出てる。
佐藤って家を探しておけば追跡も楽になるはずだ。
アパートだったら、ダメだけどね」
和臣がすかさず言った。
「アパートでないことを祈ろう。じゃ諸君、行動開始だ」
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華菜原 舞衣 - うわっ48分前っありがとうございます!楽しみにしてます。 (2020年5月27日 12時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» コメントありがとうございます!前世ユズリ…お仕事でやっていたんです。前世譲りの知識やテクはこれからも登場します。楽しみにしていてくださいね! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ひーとさん» コメントありがとうございます!これからは黒木くんの謎がさらに深まるのか、夢主ちゃんが過去を話す日は来るのか、ご注目ください。これからもよろしくお願いします! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 夢主の前世ゆずりのテクって・・・前世でもやってたってこと!?オソルベシ・・・更新、楽しみにしてます。がんばってください。 (2020年5月27日 10時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
ひーと - 黒木くんの過去が良い感じに仲を深めましたね〜。めっさキュンキュンします。此れからも楽しみにしています。更新大変だと思いますが、頑張ってください! (2020年5月26日 1時) (レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年5月20日 19時