502話彩side ページ6
見覚えがあったんだ。
どこかで、私、この人と会ってる。
どこだろうって考えて、間もなくわかった。
パパと一緒にいったドラッグストアで、山ほど薬を買ってた人だ。
「おや、誰だい?」
その人は、私のことを覚えてないみたいだった。
「菜穂さんの友だちです。今日3人で遊びに来ているんです」
その人は、納得したようにうなずいた。
直後、私の後ろから小塚クンが顔を出したんだ。
「こんにちは、おじゃましてます」
ああ、出てきたんだ、よかった!
私はほっとし、一気に力が抜けて、その場にしゃがみこんでしまいそうだった。
「あと1人は、どこにいるの」
ニッコリしたその人に向かって、私は菜穂の部屋を指さしたけれど、その指先は、まだ残っている緊張でまだブルブル震えていた。
「ゆっくりしていきなさい」
そう言って、その人は部屋に入っていった。
ドアが閉まると、私は大きな息をついた。
屋根裏部屋に入っているところを見つからなくて、本当によかったと思った。
「ありがと、アーヤ」
小塚クンがくすっと笑った。
「時間を稼いでくれたおかげで、助かったよ」
当たり前のことなのに、そんなふうに言われて、私はドギマギした。
それで、急いで話を変えたんだ。
「屋根裏部屋には、何があったの」
小塚クンは、難しそうな顔つきになった。
「ビーカーと電気コンロと試薬ビン」
は?
「それに薬品。あれは、たぶん赤リンだと思う」
はぁ…。
「あと細かく書きこんだノートがあったけど、見てる時間がなかった」
???
「何かを作ってたんだ。この家に立ちこめてるのは、その匂いだよ。部屋の中には、換気扇が2つもついていた。それでも、これだけ匂いが広がるんだから、何か相当強いものだと思うんだけど」
何だろう。
「今のところ、何とも言えないな」
そう言いながら小塚クンは、はっと気付いたように部屋のほうに引き返し、ドアに耳を押し当てた。
私が固唾を飲んでいると、やがて身を起こしてドアから離れ、私のそばまで戻ってきた。
「あの人、屋根裏部屋に入っていったよ」
うっ!
「あそこにあったビーカー類を使って何か作ってるのは、きっとあの人なんだ」
佐藤叔父さんって言ってたよね。
「このまま、ここにいると怪しまれる。いったん若武のとこに戻ろう」
それで私たちは、菜穂の部屋に戻った。
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華菜原 舞衣 - うわっ48分前っありがとうございます!楽しみにしてます。 (2020年5月27日 12時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» コメントありがとうございます!前世ユズリ…お仕事でやっていたんです。前世譲りの知識やテクはこれからも登場します。楽しみにしていてくださいね! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ひーとさん» コメントありがとうございます!これからは黒木くんの謎がさらに深まるのか、夢主ちゃんが過去を話す日は来るのか、ご注目ください。これからもよろしくお願いします! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 夢主の前世ゆずりのテクって・・・前世でもやってたってこと!?オソルベシ・・・更新、楽しみにしてます。がんばってください。 (2020年5月27日 10時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
ひーと - 黒木くんの過去が良い感じに仲を深めましたね〜。めっさキュンキュンします。此れからも楽しみにしています。更新大変だと思いますが、頑張ってください! (2020年5月26日 1時) (レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年5月20日 19時