警察官でした。11

543話 ページ49

「KZの調査会議を始める。黒木調査員の報告を聞こう」

貴和は、組んだ両腕をテーブルにつき、そこに体重をかけながら私たちを見回した。

「怪人Xと仕事をしたことがあるっていう不良の1人と、ようやく接触できたんだ。
それで、怪人Xがやっている詐欺の実態が具体的にわかった。
詐欺の種類は、振りこめ詐欺だ。
怪人Xは、まず公園や、コンビニ前で屯しているような中学生に目をつける。
勉強が嫌いで、暇がありそうで、世の中を面白くなく思っているような連中だよ。
そして近くを通りかかった子どもやコンビニから出てきた子に、こう頼むんだ。
このメモ、あの中学生たちに渡してくれない？
もちろん小遣いをやる。
そのメモには、こう書いてあるんだ。
[いいバイトアリ。駅北口のコインロッカー]。
そこにはロッカーの番号と、それを開ける暗証番号も書かれている。
それでおもしろ半分に行ってみると、コインロッカーの中には、携帯電話の番号を書いたメモとキャッシュカードが入ってるんだ。
そこに電話をすると、男が出て、そのキャッシュカードをATMに持っていって金を下ろすように命令する。
その時点でキャッシュカードの暗証番号を教えられて、手数料を約束されるんだ。
金を下ろして、また電話をすると、今度は下ろした金とキャッシュカードをスーパーの袋に入れて家電量販店に行き、1階のトイレの真ん中の個室に入るように言われる。
指定された時間に、そこに行くと、隣の個室から、袋をこっちに投げ入れろという声がするんだ。
それと交換に、向こうから手数料が投げこまれてくる。
1度で、5万とタバコ1カートンらしい」

皆の目がまん丸になる。

「すごいな、怪人X。オレ、今、ちょっと心動いた」

和典がそう言うと、和臣がバシッとテーブルを叩いた。

和典は、やってられないといったように横を向く。

「冗談くらい、わかれよ、バカ武」

「誰も怪人Xの顔を見てないのは、そういうわけなんだね」

立花さんの言葉に、貴和は軽くうなずいて話を続ける。

「もう一度仕事をやりたいヤツは、その時点で自分の携帯番号を怪人Xに教えるんだって。
この間、オレたちを襲った時には、そういうヤツらに電話がかかってきたらしい。
新しいデカい仕事を始めるから、やりたいヤツを募集するって。
必要な人数は6人、報酬は1人50万。
腕と度胸が必要だから、テストをするってことで、今夜、どんな相手でもいいから襲って、金を盗ってみろって言われたらしい」

それがあの日の夜ってことね。

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