542話 ページ48
ため息をつく和臣の隣で、和彦が手を伸ばしてカードをつかんだ。
「これを貼り出したの、誰だろ」
和臣がいまいましそうに舌打ちする。
「決まってっだろ。砂原以外の、誰にそんなことができるってんだよ」
「チョコレート渡しに行った時、」
立花さんは、涙を呑みこみながら言った。
「不良が一緒だったから、もしかして強引に取られたのかもしれない」
瞬間、和臣は、髪が乱れるほど強く、立花さんの方を振り返った。
「おまえねぇ、自分に渡されたバレンタインカードなら、断固、守るのが男だぜ。誰かに奪われたりなんか、しちゃいけねーんだよ。そんなことになったら、その時点でそいつは男として失格なの。わかったっ?!」
いらだたしくてたまらないといったような、猛烈な早口だった。
「オレなら、死.んでも渡さねぇよ。だって、くれた子がかわいそうじゃん。もし奪われそうになって、自分の力でどうしようもなくなったら、オレだったらカードを口の中に突っこんで、呑みこんででも守るぜ」
きれいなその目の中で、強い自信と誇りが輝いていた。
まったく、和臣はそういうとこカッコいいわよね。
「このカード、ボクに貸しといてよ」
和彦が言った。
「ここから何か、わかることがあるかもしれないから」
バッグからビニール袋を出し、ていねいにそれをしまいこむ。
「あれ」
階段の方から、驚いたような声が飛んできた。
「おまえら、何やってんの」
和典が、階段を上って姿を現し、脇を通りすぎていく。
「遅れっぞ」
それで、皆は、はっと我に返った。
「アーヤ、もう大丈夫?」
「うん」
和臣が私の方を向いた。
「A、アーヤのこと頼めるか」
その時、私のスマホが鋭く警告音を鳴らした。
スマホを出して画面を見る。
『ごめんなさい。私、学校休むわ。調査の方、行かないといけなくなったから』
皆に向かって手だけ振って、私は画面の印に向かって走った。
※※※
その日の秀明の休み時間、いつも通りカフェテリアで会議をすることになった。
後から来たメールによれば、全員が今回のことでキレて、貴和なんて塾だけじゃなく、学校まで放棄しようとしたらしい。
私の方の緊急調査も済み、少し遅れてカフェテリアに行くと、和彦だけがいなかった。
あのカードを調べてるのかしら。
「では、これより」
和臣がそう言いながら皆を見回し、これ以上できないくらいに重々しく、もったいをつけて言った。
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華菜原 舞衣 - うわっ48分前っありがとうございます!楽しみにしてます。 (2020年5月27日 12時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» コメントありがとうございます!前世ユズリ…お仕事でやっていたんです。前世譲りの知識やテクはこれからも登場します。楽しみにしていてくださいね! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ひーとさん» コメントありがとうございます!これからは黒木くんの謎がさらに深まるのか、夢主ちゃんが過去を話す日は来るのか、ご注目ください。これからもよろしくお願いします! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 夢主の前世ゆずりのテクって・・・前世でもやってたってこと!?オソルベシ・・・更新、楽しみにしてます。がんばってください。 (2020年5月27日 10時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
ひーと - 黒木くんの過去が良い感じに仲を深めましたね〜。めっさキュンキュンします。此れからも楽しみにしています。更新大変だと思いますが、頑張ってください! (2020年5月26日 1時) (レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年5月20日 19時