537話翔sideから彩side ページ43
「わ、悪い悪い。小野塚、オレのダチも今回の仕事に興味があるらしくってさ。ほら、怪我人のせいで大幅に人数減ったろ?信用もできるから、連れてきたんだ」
そいつはオレの後ろから、小野塚の前へと出て冷たく微笑んだ。
「新庄誠也だ。腕っぷしにはかなり自信があるよ。よろしくね」
全員の自己紹介が終わって、連中がタバコを吸い始めた。
オレと新庄もそれにならうが、オレたちのは水蒸気と匂いだけの特別製。
偽者のタバコで、法にも触れていない。
新庄は連中にはタバコの煙に見えているそれを、きれいなドーナツ形に吐き出した。
「スゲェ!それ、難しいよな。何かコツとかあるのか?」
「これをやるのが上手い女を捕まえる。口で直接教えてもらうんだよ」
そう言って新庄は、色気たっぷりに笑いながら唇を指した。
ヤツらの新庄を見る目が変わる。
少し話しただけで他のヤツだけじゃなく、小野塚も新庄を信用したようだ。
これならオレたちの計画も、上手くいくかもしれない。
※※※
彩side
砂原の家に着く頃までには、あたりは暗くなっていた。
私は、上原塗装工業と書かれた建物の前で、秀明バッグからメッセージカードをつけたチョコレートを出して、手に持った。
砂原は、私を見たら、カッとするかもしれない。
キレやすいって噂もあることだし。
そしたらチョコレートだけ置いて、逃げよう。
そして砂原の怒りが収まった頃、電話をかけて、できるだけ話をして色々と聞き出すんだ。
心を固めながら私は、建物の脇の道を入って、白い家に向かった。
その途中で、道に沿って並ぶ夜行灯の下に、ぽっと浮かんでいる赤い光を見つけたんだ。
空中に、いくつかあって、わずかに動いている。
蛍かな。
初めはそう思ったんだけど、バレンタインの時期に蛍なんてありえないよね。
何だろ。
近づいていくと、刺激臭がつんと鼻をついた。
わっ、この臭いって、タバコだ。
あれ、タバコの火なんだ。
となると…あそこにいるのは、もしかして砂原が付き合ってるっていう不良?
私は、ゾクッとした。
きっとそうだ。
砂原の家に行こうとして、その前に、あそこで吸ってるんだ。
あるいは、砂原の家から出てきて、吸ってるとか。
私は、コクンと息を呑んだけれど、この道を通らなければ砂原には会えなかった。
よし、行くぞ!
負けるもんかと自分に言い聞かせて、私は、真っ直ぐに進んでいった。
胸は、もうドキドキで、脚がもつれそうだった。
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華菜原 舞衣 - うわっ48分前っありがとうございます!楽しみにしてます。 (2020年5月27日 12時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» コメントありがとうございます!前世ユズリ…お仕事でやっていたんです。前世譲りの知識やテクはこれからも登場します。楽しみにしていてくださいね! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ひーとさん» コメントありがとうございます!これからは黒木くんの謎がさらに深まるのか、夢主ちゃんが過去を話す日は来るのか、ご注目ください。これからもよろしくお願いします! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 夢主の前世ゆずりのテクって・・・前世でもやってたってこと!?オソルベシ・・・更新、楽しみにしてます。がんばってください。 (2020年5月27日 10時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
ひーと - 黒木くんの過去が良い感じに仲を深めましたね〜。めっさキュンキュンします。此れからも楽しみにしています。更新大変だと思いますが、頑張ってください! (2020年5月26日 1時) (レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年5月20日 19時