534話 ページ40
そう言いながら貴和は、皆の前ではめずらしい、いたずらっぽい表情になった。
「話が終わって帰ろうとした時、総長の彼女に誘われた。今夜、付き合ってあげるよって」
やっぱり。
皆が、いっせいに深いため息をもらした。
「すげぇ、黒木」
「尊敬する」
「あこがれるよ」
貴和は笑いながら言った。
「虫除けを使って引いてもらったけどね」
…使ってくれたんだ。
「総長が言うには、最近、このあたりの不良が、妙な動きをしてるってことだった。
どうも新しいグループができて、そこに古いグループが流れこんでいるらしい。
新しいグループができた時には、総長に挨拶するのがこれまでの慣例だったようなんだけど、それもなくて、誰が頭なのかもわからないって。
近頃の不良は、礼儀を知らないってボヤいてたよ」
「それじゃ総長のメンツ、完璧つぶされてんじゃん」
和典が言った。
「自分のシマでそんなことが起こってるのに、放置してんのかよ。シメないわけ?」
貴和は腕を組み、ソファにもたれかかりながら皆を見回した。
「もちろん、古いグループに所属していたヤツらを1人1人呼びつけて聞いたらしいよ。
新グループを仕切ってる頭は、誰だって。
ところが情報がまるで出てこない。
顔も、年齢も、もちろん名前もまったく不明で、それで今じゃ、怪人Xって呼んでるんだって」
皆があっけにとられたような顔になった。
「アリかよ、それって」
「普通、わかるものだよね」
和臣が、ワクワクするといったように目を輝かせる。
「おもしろくなってきたじゃん。つまり、そいつは、不良たちの前に出てくる時に、いつも仮面をかぶってるんだろ」
その頭を、和典がこづいた。
「そんなん、ありえねぇだろーが」
「だって正体不明って、そういうことだろ。普通に出てきたら、顔なんてすぐわかるじゃん」
和臣が和典をこづき返すのを、微笑ましく見ながら私は久しぶりに口を開いた。
『不良たちの前に出てきてないとしたら、どうかしら』
「A、ビンゴ。
不良たちは、誰1人として怪人Xに会ってないんだ。
いつも電話で命令してくるらしい。
で、命令された不良が、単独でそれを実行する。
だから、メンバー同士でも顔を知らないんだ。
横のつながりは、まるでないってこと。
グループを組んでいるようで、実はそうじゃないわけ。
電話での命令を実行すると、かなりの金やタバコをもらえるって話」
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華菜原 舞衣 - うわっ48分前っありがとうございます!楽しみにしてます。 (2020年5月27日 12時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» コメントありがとうございます!前世ユズリ…お仕事でやっていたんです。前世譲りの知識やテクはこれからも登場します。楽しみにしていてくださいね! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ひーとさん» コメントありがとうございます!これからは黒木くんの謎がさらに深まるのか、夢主ちゃんが過去を話す日は来るのか、ご注目ください。これからもよろしくお願いします! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 夢主の前世ゆずりのテクって・・・前世でもやってたってこと!?オソルベシ・・・更新、楽しみにしてます。がんばってください。 (2020年5月27日 10時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
ひーと - 黒木くんの過去が良い感じに仲を深めましたね〜。めっさキュンキュンします。此れからも楽しみにしています。更新大変だと思いますが、頑張ってください! (2020年5月26日 1時) (レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年5月20日 19時