529話彩side ページ35
「で、Aをフリーにするのはともかく、何で抜けていいなんて言ったんだ」
確かに若武なら、せめて会議が終わるまではいろ、なんて言いそうなのに。
若武は少し目を閉じてから、妙に真剣な顔で口を開いた。
「さっき言った4人が病院通い、というのはウソだ」
「また大げさに言いすぎたのか?」
上杉クンがバカにしたように笑うが、若武はそれに乗らずに静かに言った。
「本当は、約6人が病院通い…3ヶ月ほどだろうな。そして、黒木を殴ったヤツは、オレが止めなかったら、そのまま…」
そこで言葉を切った。
上杉クンも真剣な顔になって、周りに聞こえないように言う。
「殺.してたってのか」
若武は首を振らない。
でも、それが答えだった。
小塚クンと黒木クンも、少し悲しそうな顔で言った。
「あの時のAはかなりキレていたよ。その怒気と殺気で、目が金色に光って見える感じだった」
「あの時のAは、カルディナルが言った通りだ。人間をその爪で切り裂き、その牙で喰い千切る。…正に絶対の強者、狼…」
空気が重くなって、小塚クンが慌てて言い直した。
「それでもほんの欠片だろうけど、理性は残ってたみたいだよ。ボクが襲われそうになったら助けてくれたし、若武の制止にも答えていたから」
上杉クンが、その頬に一筋の汗を流した。
「つまり、あいつがガチでキレたら…」
若武も、まっすぐな瞳と固い声で答える。
「オレたちで止められるかどうか、わからない」
その場が、水を打ったように静かになる。
そんな危険な人だったなんて…、でも今までも…。
若武が小塚クンの方を向いて、はっきりと言った。
「もしそうなった時のために、クロロホルムみたいな、当てるだけで眠らせられる薬を、小塚に作ってほしいんだ」
小塚クンもしっかりとうなずき返す。
「わかった」
驚いた私は、慌てて反論する。
「ちょ、ちょっと待って!そんな人が近くにいて怖くないの?私たちもやられちゃうかもしれないんだよ?!」
若武は、少しも考えることなく言い返してくる。
「Aがその牙を、オレたちに向けることは絶対にない」
「何で、そんなのわからないでしょ」
上杉クンも、メガネを人指し指で上げながら言う。
「Aが今まで目をつけたのは、オレたちに危害を加えようとしたヤツだけだ。最初の事件の強盗犯、若武にスコップを振り下ろした女、ミシア、列車を止めなかったカルディナル、そして今回の不良」
黒木クンも笑顔で言う。
73人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
華菜原 舞衣 - うわっ48分前っありがとうございます!楽しみにしてます。 (2020年5月27日 12時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» コメントありがとうございます!前世ユズリ…お仕事でやっていたんです。前世譲りの知識やテクはこれからも登場します。楽しみにしていてくださいね! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ひーとさん» コメントありがとうございます!これからは黒木くんの謎がさらに深まるのか、夢主ちゃんが過去を話す日は来るのか、ご注目ください。これからもよろしくお願いします! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 夢主の前世ゆずりのテクって・・・前世でもやってたってこと!?オソルベシ・・・更新、楽しみにしてます。がんばってください。 (2020年5月27日 10時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
ひーと - 黒木くんの過去が良い感じに仲を深めましたね〜。めっさキュンキュンします。此れからも楽しみにしています。更新大変だと思いますが、頑張ってください! (2020年5月26日 1時) (レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きょっちー | 作成日時:2020年5月20日 19時