519話 ページ25
「謎だな。おい、これって、事件かもしれないぜ」
その目はキラキラ輝き始めていた。
「きっと事件だ」
そう言って、親指で手早く2度、自分の胸を指す。
「KZリサーチ事務所の所長としての、オレの第6感が、うずく」
和臣の第6感…、いつも結局大きな事件だし、怖いわねぇ。
みんなは違う意見らしく、顔を見合わせてから、和典が言った。
「所長の勘じゃなくて、目立ちたがり屋の勘じゃ、ね?」
みんながドッと笑ったとき、同じく気付いていたらしい貴和が、声を落としてささやいた。
「オレたち、つけられてるぜ」
驚いた立花さんが立ち止まろうとして、和臣の押し殺.した声が響いた。
「止まるなっ!普通に歩くんだ」
前に顔を向けたままで和臣は、和典と貴和に視線を走らせた。
「アーヤを、フォローしろよ」
2人が、立花さんの両側にすっと寄っていき、左右から腕をつかみ、止まりそうになっていた立花さんを歩かせた。
「絶対振り返るな」
「目的は何だろ」
不安そうな声でいった小塚くんに、和典が前方を見すえたままで答える。
「たぶん、金」
和臣がうなずいた。
「A、敵のフォーメーション、気配で探れるか?」
私も真っすぐ前を見つめたまま答える。
『当然。ついてきているのは16人。前方の十字路の信号の所に、10人待ち伏せしてる。気配の感じからも、あまり強いわけでは無さそうね。これくらいなら、私1人でも対処できるわ』
けれど、その気配の中に、知ってる気配もあるような…。
「おっもしれぇや」
和臣のはしゃいだ声に思考が引き寄せられる。
「オレ、最近、派手なケンカやってない。1人で5、6人倒せば、なんとかなるじゃん。やっちまおうぜ」
そう言いながら、ふっと立花さんに目を留め、くやしそうに頬をゆがめた。
「ああ、こいつがいたんだっけ…」
その後ろから小塚くんが言った。
「悪いけど、ボクも数に入れないでよ。戦闘できないからね。速くも走れないし」
「ここはやっぱ」
和典が、ため息をついた。
「逃げ、だろ。他に手がねぇーよ、くっそ」
貴和が静かに口を開く。
「逃げるとすれば、あの十字路だな。あそこで、三方に散るんだ」
和臣がうなずいた。
「よし、それでいこう。黒木、アーヤを頼む」
すると貴和は、クセのないその髪をサラッと乱し、首を横に振った。
「オレは、パス。他のヤツに頼めよ」
私は小さく息をついた。
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華菜原 舞衣 - うわっ48分前っありがとうございます!楽しみにしてます。 (2020年5月27日 12時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» コメントありがとうございます!前世ユズリ…お仕事でやっていたんです。前世譲りの知識やテクはこれからも登場します。楽しみにしていてくださいね! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ひーとさん» コメントありがとうございます!これからは黒木くんの謎がさらに深まるのか、夢主ちゃんが過去を話す日は来るのか、ご注目ください。これからもよろしくお願いします! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 夢主の前世ゆずりのテクって・・・前世でもやってたってこと!?オソルベシ・・・更新、楽しみにしてます。がんばってください。 (2020年5月27日 10時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
ひーと - 黒木くんの過去が良い感じに仲を深めましたね〜。めっさキュンキュンします。此れからも楽しみにしています。更新大変だと思いますが、頑張ってください! (2020年5月26日 1時) (レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年5月20日 19時