警察官でした。11

517話 黒木くんのネタバレあり ページ21

『根が無くったっていいじゃない。今回の事件でも、挿し木が出てきたでしょう。あれだって初めは根が無いのよ。自分で根を張って成長していくの。根が無いなら作ればいい。私がそのために必要な土になるから。根が張れなくても、飛んでいかないように押さえてるから』

顔をそっと寄せて、大好きな赤い唇にキスをする。

離れて貴和の顔を見ると、泣きたいけど、我慢している顔。

ここで泣かせてあげるのが、大人の役目よね。

でも、これでは素直に泣かないだろうし…。

私はもう一度唇を寄せた。

しばらく小さくキスをくり返して、貴和の強張りが取れた所で、貴和の中にそっと侵入した…。

しばらくして、心地よかった空間から出て貴和を見ると、真っ赤な顔で涙が流れていた。

「い、今の、何…？」

『ディープキスよ。気持ちよかった？』

「それはわかるよ。じゃなくて、オレが初彼なんでしょ？何でこんな上手いの…？」

普通に泣けないなら、違う方法で…って思ったんだけど、やり過ぎたわね。

ちなみにテクは前世譲り。

中学生が公安のテクに勝てるわけないのよねぇ。

『まぁ、それはいいじゃない。疲れたでしょ？今日はもう寝ましょう』

貴和を抱きしめて布団を被る。

少し不機嫌だった貴和も、私を強く抱きしめて静かに言った。

「まだ、いつか話したいことはあるんだ。でも、今はここまでで…」

『いいわ。貴和が話したいって思った時に話してちょうだい。その時が来なかったなら、一生話してくれなくてもいいわ。あなたが望まないことは、私も望まない』

そのまま、互いの鼓動を感じながら眠った。

貴和は自分の生まれに悩み、負い目のようなものを感じているのだろう。

でも、私は、あなたをこの世に生み出してくれた全てに感謝したいわ。

私にもいつか、勇気を出せる日が来るのかしら…。

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