509話 ページ13
和臣は、できるだけセンセーショナルなことを書きこんで注目を引こうと思ったらしく、用件の所に、大.麻栽培と覚醒.剤製造の密告と書いた。
『具体的に書かないほうがいいわ。要・極秘事項とするのよ』
和臣は書き直し、次に氏名の所に、KZリサーチ事務所と入れた。
すぐさま貴和のチェックが入る。
「まずいよ。子どもの探偵ゴッコだと思われる。若武の名前でいい」
そうやって何とか申込用紙を仕上げて、カウンターに持っていくと、今度はこう聞かれた。
「アポイントメントは?」
和臣が、取ってないと答える。
すると、次は、
「社会部は、いくつかのグループに分かれています。どこの、誰に面会ですか?」
と言われた。
和臣が戸惑っていると、後ろから貴和が顔を出し、微笑んで答えた。
「僕たち、社会部の組織がよくわからないし、記者の方の名前も知らないので、どなたか手の空いてる方で結構です」
それでようやく申込用紙を受けとってもらい、入り口の脇に置かれたソファで待つことになったのだった。
「結構、不親切だよね」
小塚くんが言い、和典がぼやいた。
「子どもだから、バカにしてんだよ」
和臣がつぶやく。
「今に見てろよ。びっくりさせてやらぁ」
そのまま、私たちは一時間近くも待たされた。
和臣はイライラして、そのあたりを歩き回り、和典と貴和は居眠りを始めた。
退屈そうにしていた小塚くんと小声で尻取りをしていると、ようやく1人の若い男性がやってきて、声をかけてくれた。
「若武君って、どの子?」
和臣はピュッと戻ってきて、その人の前で姿勢を正した。
「僕です。密告したいことがあるんです」
その人は、くすっと笑った。
こう言っては何だが、おそらくお人好しタイプだな。
「じゃ、あっちで聞こうか」
指さしたのは、短い廊下の突き当たりだった。
開いたままのドアの向こうに、小さな部屋が見える。
その人が先に立ってそこに入っていき、私たちはその後に続いた。
「最後の人、ドア閉めてね」
真ん中にテーブルがあり、その周りに椅子が置いてある。
何だか取り調べ室みたいできゅうくつね。
「最初に自己紹介をしようか」
その人は、胸ポケットから名刺入れを出し、そこから取り出した名刺を、私たちに配った。
「僕は社会部の記者で、長尾といいます。事件班に属して1年目の、まだ新米の記者です」
それで私たちも、順番に自己紹介した。
私は名字だけ伝えた。
薊の少女をピックアップされちゃ面倒だからね。
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華菜原 舞衣 - うわっ48分前っありがとうございます!楽しみにしてます。 (2020年5月27日 12時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» コメントありがとうございます!前世ユズリ…お仕事でやっていたんです。前世譲りの知識やテクはこれからも登場します。楽しみにしていてくださいね! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ひーとさん» コメントありがとうございます!これからは黒木くんの謎がさらに深まるのか、夢主ちゃんが過去を話す日は来るのか、ご注目ください。これからもよろしくお願いします! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 夢主の前世ゆずりのテクって・・・前世でもやってたってこと!?オソルベシ・・・更新、楽しみにしてます。がんばってください。 (2020年5月27日 10時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
ひーと - 黒木くんの過去が良い感じに仲を深めましたね〜。めっさキュンキュンします。此れからも楽しみにしています。更新大変だと思いますが、頑張ってください! (2020年5月26日 1時) (レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年5月20日 19時