警察官でした。9

405話 ページ9

壁には猟銃を描いた絵がかかっており、そのまわりにいくつものペナントが貼ってある。

刺繍されているのは、アメリカのフットボールチームの名前らしい。

しかし、この部屋に少し不釣り合いなガラス戸つきのラックがある。

中にはテープが入っていて、タイトルは[ララミー物語]。

1巻から53巻まである。

手にとって見ると、鳥肌が立った。

そのジャケットは、部屋でほほえんでいる主人公のスチール写真だった。

それを踏まえて、自分が今いる部屋を、ながめまわした。

ジャケットの写真と、まったく同じ家具、同じ配置、同じ飾りつけ。

カップやトロフィー、ペナントの数までそろっている。

テレビの世界が、ここに再現されているのだった。

ケースを裏返し、解説を読む。

[アメリカ上流家庭を舞台にしたホームドラマ。日本でも1986年から2年間にわたってテレビ放映され、大ブームを巻き起こした。主人公は、アメリカの有名大学を出たハンサムな敏腕弁護士。忙しい仕事をこなしながら理想的な家庭を作りたいと夢見ているが、亡くなった両親を神様のように崇拝しており、心に残っているその面影や命令に逆らえないため、しばしばトラブルの元となる]

1986年から2年間といったら、望月は10歳から12歳。

何か関係があるんだろうか。

『上杉、黒木くん、これ』

2人にもジャケットを見せると、言葉を失っている。

「あいつらにも見せた方がいいな。呼んでくる」

そう言って上杉は出ていき、私は部屋を詳しく調べてみる。

若武くんたちが走ってくる足音が聞こえた。

「ここ、望月孝太郎の部屋らしい。入ってみろよ。びっくりだぜ」

上杉の声に合わせて、黒木くんがドアを開け、少し気どって言った。

「ようこそ、弁護士の部屋へ」

みんなも一見しただけでは豪華な部屋に、息をのんでいる。

「すごい、立派な部屋だね」

小塚くんが感心したように言うと、上杉がせせら笑った。

「どこがだよ。それ、見てみ」

後の説明は上杉に任せ、さらに部屋を調べていく。

写真立てを見つけ、のぞきこむ。

「望月孝太郎は、なりたいというより、ならねばならないっていう強い強迫観念みたいなものを持っていたんじゃないのかな」

上杉の声をバックに、同じく写真を見つけた黒木くんがみんなに声をかける。

「ここに写真があるよ」

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