420話 ページ24
「望月孝太郎は、砂原に、塾に行くように勧めてたんだよな。だったら、その準備のためにオレんちに泊まりこみで勉強するって言えばいい。今、いい塾に入るにはすごくたいへんなんだって。ついでに、オレの父親は弁護士だって言っとけよ。それが望月のコンプレックスのはずだ。たぶん反対しないよ」
それで望月孝太郎は、許可を出したのだった。
ただ砂原くんに、こう言ったらしい。
【クリスマス・イヴだけは、何があっても必ず、この家に帰ってこいよ】
まったく気分が悪い。
その日までに、絶対証拠をつかんでやる。
「まかせとけって。軽い、軽い。やってやらぁ」
若武くんはそう言ったけれど、油断は大敵。
次の週の土曜日に、砂原くんと私たち4人は、南木曽めざして出発した。
それは、明後日がもうクリスマス・イヴという、かなりギリギリの日だ。
時間の関係から新幹線を使い、一度名古屋に出る。
そこから電車に乗り換えていくのだ。
『悪いけど、長野からは別行動でいいかしら。お世話になった人に会っておきたいの。私の方が早く終わるでしょうから、先に別荘に行って掃除とかしておくわ』
「わかった。悪いな、任せちまって」
『お安いご用よ。じゃあ、そういうことで』
みんなとわかれて、別荘からそう遠くない村にやって来た。
赤石村という、山にある自然が美しい村だ。
懐かしい気持ちになりながら歩き、大雄寺に続く石段を上った。
上り切ると三門があり、それを潜った所に沙羅双樹が植えられている。
昔より高くなった気がする。
その根本にそり上げた頭に、黒染めの羽織の男性が立っていた。
『安静さん、お久しぶりです』
ふり向いた男性は40代前半、清廉な雰囲気。
「Aちゃんずらか?大きくなって。お父様とお母様は、元気かや?」
『はい。今は2人とも、フランスにいます』
「ほんに。そんで今日はどうしただ?」
『友人と別荘に来たんです。それでせっかくなので、お会いできればと思いまして』
安静さんが、嬉しそうに笑った。
「そうか。中でお茶でもどうかや?」
誘いは嬉しいが、ここに来るまでに時間がかかってしまったし、一度別荘に荷物を置きに行ったが、想像以上に汚れていたんだよな…。
『残念ですが、別荘の掃除をしたいのです。思った以上に散らかっていて。誘いは大変嬉しかったです』
「ほうか、残念だに。またいつか、ゆっくりおいでな」
『はい。もちろんです』
「お父さん」
若い男性の声が、後ろから聞こえてきた。
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ライ(プロフ) - 「まず桜田の家で、東大の卒業生名簿を見た。浪人している可能性も考えて、前後の年代も見てみたけれど、望月孝太郎の名前はどこにもなかった。あの人は、東大を出てないね」 みんなは、うなずいた。 それは、保険証からも確認できている。の部分が重複してますよ! (2021年3月26日 14時) (レス) id: 65b1e4f8ab (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - manaさん» コメントありがとうございます!まだまだ拙いこの作品を気に入っていただけて嬉しいです。その応援を糧にこれからも頑張っていきます! (2020年3月30日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
mana - 私この作品大好きです!ものすごく面白いです!更新楽しみに待ってますので頑張ってください!応援してます (2020年3月30日 18時) (レス) id: ecb2e4c19d (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 透架さん» コメントありがとうございます!神作とまで言っていただけて本当に嬉しいです。これからも頑張っていくので、応援よろしくお願いします! (2020年3月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
透架(プロフ) - 最近kzの小説が減ってきてて漁りまくってたら神作に出会いました!!すごく面白いです!更新頑張ってください!! (2020年3月21日 12時) (レス) id: 2be61dc08d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年3月20日 13時