40話 ページ42
私は男の動きに注意しながら、この日のために作っておいた物のスイッチを入れた。
男は、建物…車庫のシャッターの脇にあるドアに、そっと手をかける。
ゆっくりとノブを回し、ドアを少しずつ開くと、中から明かりが一筋もれてきた。
やがて男はそのドアを全て開き、そっと中に入った。
向こうを向いて、床に片膝をついているあの子…若武君と、その頭上にバットを振り上げている男の後ろ姿が見えた。
「若武っ!」
立花さんが叫んだことで、若武君は振り返るが、男がバットを振り下ろすのと同時だった。
若武君は右足を振り上げ叩き下ろされるバットを受け止め、直後にウエストを捩じるように左足を蹴り上げその足を男の後頭部に深々と埋めた。
鈍い音がし、バットが地面に落ちて転がり、ゆっくりと男が倒れた。
二人は、何か話しているようだが、ここからは聞こえなかった。
すると、その後ろで男が意識を戻し、バットを拾う。
瞬間、私はスイッチを入れておいたスタンガンを、男の家の屋根から投げつけた。
「ぐわぁぁぁぁぁっ!!」
スタンガンは特製のもので50万ボルト、皮製のジャンパーの上からでも十分に効果がある。
男の着ているジャージでは、当分目を覚まさないだろう。
もちろん死.ぬようなことは無いけれど。
若武君と立花さんは、今ので気づいたのか私を見上げてきたので、軽く手を振っておいた。
間もなく黒木君が駆けつけてきて、それから上杉君や小塚君もやってきた。
皆、若武くんが動くと思って焦って家を飛び出してきたらしい。
皆が警察や救急車を呼んでいる間、若武君は車庫の片隅に立ってとても得意そうな意味ありげな笑いを浮かべていた。
警察が来ると、
「すみません!ちょっとこっちに来てください!!」
大声を上げて、自分のところまで招きよせ、気取って口を開いた。
「これを、見てください」
そこにあったのは、若武君が自転車につけていたというサッカーボールのキーホルダーだった。
「車の塗料がついています。それだけじゃない。よく見てください。その上から、犯人の靴跡がついてるんです。車庫の床からボールの上にかけてしっかりと。これは、犯人が車にはさまった自転車をここではがしたという動かぬ証拠です」
警察が感心したように頷き、若武くんを褒めた。
若武くんは得意になりながら、今回のことは自分の責任で私達は関係ないと言った。
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百合香(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがすごくよく、本当に原作のような話の進み方が好きです!勉強になります……。これからも、応援してます! (2022年5月29日 16時) (レス) @page3 id: 26b82cca33 (このIDを非表示/違反報告)
トメ - きょっちーさん、はじめまして!トメと申します。きょっちーさんに感想を送るためにアカ作りました笑このシリーズがとても好きで感想を送りたいと思っているうちにしばらく浮上されなくなってしまったので、再開してくださってとっても嬉しいです!続き楽しみにしてます! (2022年4月16日 13時) (レス) @page47 id: 702d0afd33 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - きょっちーさん、おひさしぶりです!もう浮上されないのかと思っていたのでとても嬉しいです!今までの書き方もよかったですが、今の書き方もいいですね!無理せず頑張ってください! (2022年4月7日 16時) (レス) id: bde42b2272 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - Reiさん» コメントありがとうございます!「おもしろい」と言ってもらえるのはとても嬉しいです。これからも読んで下さいね (2019年7月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
Rei - とてもおもしろいです。読むのが楽しみになっています! (2019年7月20日 14時) (レス) id: 6035a3040f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月11日 19時