24話 途中から彩SIDE ページ26
上杉君が悔しそうに、頭を掻いた。
「チャリが停めてあった道の幅、調べときゃよかった」
『分かるわよ。自動車がかなりギリギリで通れる幅よ』
「やっぱり自動車とぶつかったのか?それで引き摺られたことで塗料がついたのか」
小塚君が作業を終え、話しかけてきた。
「あのさ塗料と一緒に土っていうか、泥もついてたよ。犯人は新田町の人間だ。塗料は見た感じ、外車のものだね」
「じゃ犯人は、新田町住みの緑色の外車を持った人間だな」
『なおかつ、盗んだ日はもの凄く焦っていた様ね。車も今は壊れてる』
「よし、じゃあ一応、そのセンでいってみようぜ」
「オッケー」
私達は立ち上がり、若武君達の方を振り返った。
「僕達の考えを発表する」
小塚君が言うと、若武君が立ち上がって腕を組んだ。
「よし、聞こう」
黒木君も身を起こし、傍の立ち木に体をもたせ掛けた。
「結論から言えよ。その方が早い」
「僕達の考えでは」
そこまで言って小塚君は、皆の気迫に押されたらしく、上杉君を振り返った。
「上杉言ってよ。僕、自分の得意なところの説明なら大丈夫だけれど、全体はうまく言えないや」
それを受けて上杉君が、皆の視線を受けとめ、口を開いた。
「俺達の考えではこの自転車を盗んだ犯人は、新田町に住んでいる緑色の外車を持った人間で、盗んだ日にはもの凄く焦っていた奴だ。そしてその外車は、今壊れている」
立花さんも若武君も黒木君も、一瞬呆然とし、アングリと口を開けたまま何も言わなかった。
立花さんと若武君はともかく、黒木君までそんな顔をしているのは、なかなか新鮮で可愛く思えた。
「犯人の免許証か何かが、自転車の中に入ってたのか」
ようやく正気を取り戻したらしい若武君が言うと、上杉君は眼鏡を押し上げながら首を横に振った。
「いや、見ての通りだ。そんなもの、ありゃしない」
「じゃ、どうして分かる?」
黒木君の言葉に、上杉君は自信たっぷりに笑った。
「この自転車が教えてくれた」
※※※
彩SIDE
「説明するから来いよ」
そう言った上杉君の傍に、すぐさま若武が歩み寄った。
瞬発力のある若武は、いつも素早い。
次に私が、そして最後にゆっくりと黒木君が近寄ってきた。
「まずハンドル、ブレーキレバーの脇、シートチューブ、クランク、フロントフォーク、それからサドル、シートピラー」
そう言いながら上杉君は、指で順番にそれらを差した。
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百合香(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがすごくよく、本当に原作のような話の進み方が好きです!勉強になります……。これからも、応援してます! (2022年5月29日 16時) (レス) @page3 id: 26b82cca33 (このIDを非表示/違反報告)
トメ - きょっちーさん、はじめまして!トメと申します。きょっちーさんに感想を送るためにアカ作りました笑このシリーズがとても好きで感想を送りたいと思っているうちにしばらく浮上されなくなってしまったので、再開してくださってとっても嬉しいです!続き楽しみにしてます! (2022年4月16日 13時) (レス) @page47 id: 702d0afd33 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - きょっちーさん、おひさしぶりです!もう浮上されないのかと思っていたのでとても嬉しいです!今までの書き方もよかったですが、今の書き方もいいですね!無理せず頑張ってください! (2022年4月7日 16時) (レス) id: bde42b2272 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - Reiさん» コメントありがとうございます!「おもしろい」と言ってもらえるのはとても嬉しいです。これからも読んで下さいね (2019年7月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
Rei - とてもおもしろいです。読むのが楽しみになっています! (2019年7月20日 14時) (レス) id: 6035a3040f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月11日 19時