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第1章 ページ13

四階へ着き、彼女は足を止めた。

「手を出して」
言われるままに両手を向ける。

「違う左手」
そう言われて右手を降ろすと彼女は差し出した左手を握って歩き出した。

「お、おい! なんだこれは‼」

突然手を握られ 声を上げる。

「一様の予防」

自分とは正反対で焦る様子もない顔に黙るしかなかった。
いつまでも後ろで手を引かれているわけにはいかない。手は握ったままだが横に並んだ。

廊下の中盤に差し掛かった時
前と同じように電気が一斉に消えた。
そしてオレンジ色の夕日のような光が差し込む。

「お、おい」

「静かにしてて」

トンっと、足に何かがぶつかる。
これには覚えがあった。
下を見れば目に入る つむじ。

叫びが喉に差し掛かった瞬間

「緑間くん!」

グイッと腕を引かれ下がり距離を開ける
そして、神憑が庇うように前に出た。
子供は顔を上げる 変わらずに目がなかった。

「お兄ちゃん約束破ったね。 私の人形持って来てくれなかった。」

小さな子供から発せられる声ではなかった。
高い声や低い声、しゃがれた声など
複数の人が同時に話しているかのように感じる。
逃げ腰になるが 神憑は手を強く握っていて動くことができない。


「でも、最高のプレゼントだよ。お兄ちゃんからは何も取らないでいてあげる。この人形ももういらない。
その代わり‥ー」

子供はそこまで言って人形を放り投げ

「キャハハハハハ! お姉ちゃんの力ちょーだい‼‼」

とんでもないスピードで 一瞬で神憑の目の前に来た。

「結界」

バチン、 まるで見えない壁があるかのように
神憑が発した一言で子供は勢いよく弾かれる。
床に叩きつけられるが まるで効いていないかのように すぐに立ち上がった。

神憑はパッと掴んでいた手を放す。

「後ろ 下がってて。」

そう言って 右手の人差し指と中指を立てた。

後ずさるが 腰が抜けて尻もちをついてしまう。

「お姉ちゃんの体 欲しい 欲しい 欲しい 欲しい 欲しい 欲しい‼‼
その力があれば あれば‼」

狂ったように 叫び声をあげていた。
もはや顔つきはこの世のものではないほど
恐ろしい。 とてつもない憎悪だ。

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作者名:杏子メロンパン | 作成日時:2019年3月14日 11時

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