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XIII ページ13

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「溺れるぞ」
「…………。……早かったのね」

 ほとんど落ちていた瞼をこじ開ければ、いつの間に戻っていたのか──怪訝そうな顔が私を見下ろしていた。葉巻の香りが先程より濃いので、きっと話のついでに一服して来たのだろう。香水と混ざった苦味のあるにおいが風に流されている。


「貴方もどう? 気持ちいいわよ」
「結構だ」
「そ。……ねぇ、そこのワインを取って」


 眠気はまだ身体に残っている。倦怠感に身を委ねたまま強請(ねだ)ると、意外にも彼は黙ってグラスを手に取った。
 そのまま長い脚を折って座り込むので、驚きつつも受け取ろうと手を伸ばすと──グラスは私の元には渡らず、中身もまた彼の口腔内に消え去った。

 あ、と声が漏れる。


「最後の一杯だったのに」
「……安酒だな。ウチにある物のほうが旨い」
「私はあれ、好きじゃないわ。濃いもの」

 あーあ、と不貞腐れて上体をプールサイドに倒すと、タイルが思っていたよりも冷たくて身震いした。水中の方がまだ暖かい気がする。浸けたままの脚を揺らせば、ぱちゃんと水の跳ねる音がした。浜辺に打ち上げられた魚の気分だ。

「……────」
「ン。……何か言った?」


 問いに対する返答は得られず──その代わり、顎を掴んだ強引なキスが降ってきた。なに、と口を開けば大きな舌がぬるりと口内に侵入して、言葉ごと呼吸が呑み込まれる。仰け反るような体勢なので余計に苦しい。おまけに彼の舌は葉巻とお酒の味が混ざってほろ苦かった。

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おはよ - めっちゃ面白い作品でした!最高です (2023年3月20日 22時) (レス) @page44 id: d4f6705fb9 (このIDを非表示/違反報告)
白鯨(プロフ) - みうしさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます! 私としましてもまだ書きたいものが幾つかありますので、またぼちぼち気まぐれに更新しようかと思います。何卒気長にお待ちください。 (2022年11月13日 23時) (レス) @page32 id: 7a595430fd (このIDを非表示/違反報告)
みうし(プロフ) - 大好きな作品が終わってしまって寂しい〜〜泣泣と思っていたら番外編も書いてくださるんですか😭😭是非読みたいです……!! (2022年11月12日 8時) (レス) id: f1ae5cae79 (このIDを非表示/違反報告)
愛ってなんや? - 面白いです!!続き待機してます!! (2022年10月23日 14時) (レス) @page19 id: 027cc676f2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白鯨 | 作成日時:2022年5月25日 10時

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