記録係。【アンナチュラル 】

閉廷します ページ33

裁「証人は聞かれたことだけに答えるよう」


中「聞かれたことに答えてる。何を聞いてたんだ。」

ちょっと…お気に入りは聞いてないからなあ。
なんとも言えないになあ。

烏「いい加減にしなさい！法廷を侮辱するつもりですか！」

中「まぁまぁ、そう感情的になるな。大事なことだからもう一度教えてやる。メスもハサミも刃は使い捨て、研いだりはしない。」

烏「それがどうした。」

中「成分表をよく見ろ。ケイ素の数値が異常に高い。包丁だけではあんな数値にはならない。元素分析で原因を特定したら合砥だった。」


烏「合砥？」


中「京の料理人が包丁を研ぐ時に使う最高の砥石。
セラミックの包丁は合砥では研げない。解剖器具は刃を研がない。
残された可能性は一つ、真の凶器は合砥で手入れをされたステンレスの包丁。…以上だ。」

烏「勝手に終わらせるな！！」


中堂さんは私の座っていた席のそばまできて、私のとこでピタッと止まり腕を掴まれる。

『え？…ちょ！中堂さん！？』

わーお、目立つー。とりあえず頭下げとこう。


そのあと、桜小路しずくの弟が疑いの目線を集め、桜小路要一の疑いは晴れた。

「ありがとうございました。」

中「ふさけるな。お前が女は嫌だとクソ小せえこと言うから俺が駆り出されたんだ。
人なんて皮を剥げば全員肉の塊だ。死ねば分かる
……A、行くぞ。」

『あ、あの…お、お邪魔しましたー！』

私の腕を掴んだまま、すたすたと歩いて行く。
チラリと中堂さんの顔を見ると

また悲しそうな顔して…
なんて顔してるんですか…
誰を思って言ってるんですか…

もやもやもやもや。
いつまで続くんだろう。

一緒にいられるのは嬉しいけど、
…もし、解決したら…その後も私は貴方の隣にいても良いんでしょうか。
一緒にいる意味は無くなるんじゃないんでしょうか。

そう思うとポロポロと涙が溢れてきてしまった。

中「…！？…どうした」

『いえ…な…なんで…も、ありません。』

喪服のポケットからくしゃくしゃになったハンカチを出して「使え」と言われた。

『…確実にポケットに入れっぱなしで洗濯してる』

中「うるせえ。文句あるなら使うな。」

『…ありがたく頂戴します。』

中「…何考えてる」

『…え？』

この想いは気づかれてはいけない。
お姉ちゃんに中堂さんに申し訳なさすぎる。
秘密だ。絶対に。

『…ハンカチで鼻かもうとしてたのバレました？』

中「ふざけるな、返せ。」

そう。この距離感でいいんだ。

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