記録係。【アンナチュラル 】

嫌い ページ32

寝坊した！こんな大事な時に！！
なんで誰も起こしてくれないの！？
ご丁寧に毛布までかけてくれて！
…誰だか知らないけどありがとうー！


そっと入ると傍聴席の六郎くんがわたしを見つけて手招きしてくれる。



『…ねえ。中堂さん…態度悪くない？』

六「…だよねえ。」


どかっといつものように椅子に腰掛けた中堂さん。
まあ、しっかり座ってるとは思わなかったけど
これは酷すぎる。


裁「検察の主張する凶器はセラミックですが…」

中「あり得ない。成分表を見れば馬鹿でも分かる。」


この中で中堂さんが一番悪い人に見える。
ダメだ…面白い…笑っちゃう。


烏「えー…中堂さん。あなたの解剖実績は如何程ですか？」

中「3100だか、200だか？」


烏「先日これが凶器に間違いないと仰った草野教授は15000件の解剖実績をお持ちでした。それに比べるとかなり少ないような。」

まったく…頭が良い人はすぐに数字に頼りたがる。
数字が多ければ多いほど権力があるとかなんとか言う。

そんな事ない。
その数字が今の裁判に関係がある数字なのか。
今、役に立つ数字なのか。
そう思うと腹が立ってきた。その時…

中「カビの生えた経験がなんになる？そんなくだらない数字より目の前の鑑定結果を見ろ。それが全てだ。」


烏「あなたがこれは凶器ではないと主張する根拠は鉄、クロム、ニッケル。しかし、これらが凶器から出たものとは言い切れませんよね？解剖には様々な道具を使います。それらの道具にも鉄、クロム、ニッケルは含まれるのではないですか？」

中「…馬鹿が。解剖器具から微粒子がそんなポロポロ落っこちてたまるか。凶器と背骨がぶつかったから出た成分だ。」

烏「それは貴方の思い込みでしょう。まともな法医学者とは思えない言葉です。」

この人、わざとそんな事言ってるのかな？
本当は分かってるんじゃないのかな？
と、思うくらいアホな事を言っている。

中「知らないようだから教えてやる。解剖で使うハサミは切れなくなったら捨てて新しいものに変える。解剖で使うメスは刃の部分が替え刃になってて、切れなくなったら新しいものに変える。
解剖医によって気に入りのメスがあってな。俺はドイツ製が好みだが。」

中堂さん、流石だなあ…でも、お気に入りは聞いてないよ。怒られるよー。

烏「裁判長、証人の無駄話をやめさせてください。」

ほらみろー。怒られたー。

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