追想-TUISOU-１０ Secretな彼女番外編 (ページ23)

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するとリンは
そんな状態の中でも冷静さを失わず

「翔・・・ここはちょっと寒いし、痛い・・・」

「は？」

一時中断されたことに
俺はリンの顔を見る

そこには
さっき別れ話をしたのが嘘かのように
いつもと変わらない１０年続けてきたそのままの俺らが

思わず
フと笑ってしまう

「何？私変なこと言った？」

「いや・・・・確かに冷える
この石みたいな床？膝、痛ぇし冷たいし
タイミング逃してこのまま続けてたら、怪我しそうだわ」

そう言うと、上半身下着姿のままのリンが
恥じることなく笑う

「シャワー浴びる？」

そう言って立ち上がろうととしたリンに合わせ
俺も立ち上がるけれど

「いや・・・このまま」

そう言って俺は、リンの背中と膝に手を回し
抱きかかえ、ウォークインクローゼットを抜け、
寝室に向かう
その距離、ほんの数メートルだけれど

リンが

「え、ヤダ」

「どうして？」

俺が笑いながらリンを見ると

「なんでもない。見ないで」

と言ったリン

「別に今さら」

「やなの」

「何がさ」

「だって、こんなことしたことないじゃん」

「そうだっけ？」

「あ・・・私にはね」

そう言って、意味ありげに笑ったリン

「おまえさ、それ今ここで言うなよ
てかさ、やんねぇわ、そもそも抱き抱えるなんて
絶対しねぇわ」

「どうだか？」

そう言って俺を見て笑ってたはずのリンが目を背ける

「なんだよ・・・」

「だから、見ないでって」

「いーや、今日はじっくり見てやるわ」

「だから、やなの」

きっとリンも思うことがあるのだろう
俺が
もしかしたら、この先こんな風景やこんな会話をすることはない
いや、もしかしたら・・・じゃない
確実に最後なんだ

だから、俺は10年一緒に過ごしてきた思い出とともに
この瞬間を目に焼き付けておきたいって思ったんだ

「だから、見ないでって」

「いやだね」

「この抱き方されると、
お腹がムニってなるから、3段腹になる」

「は？そこ？」

そう言って笑ったリン
リンの言う3段腹の中心には
１9の時に俺があけたピアスが光っていた

俺はそのまま、寝室に入り、
ゆっくりリンをベッドに下ろすと同時に、自分もその上に重なる

雨の音が、まるでバケツ使って、思いっきり打ち付けたような音が
すぐそばの窓に当たる

日本のように直接照明がない
その寝室で
ベッド周りの間接照明が一瞬、この嵐のせいでゆっくり暗くなったけれど
再び、ぼぅと明るく灯る