赤城憐の想い出 ページ18
月明かりが青白く、優しく差し込むホテルの一室で赤城憐は一人ベッドに座り一つのペンダントを眺めていた。
そのペンダントは、昔婚約者である一人の少女から貰ったもので、赤城にとってはこの世で一番大切なものだった。 ペンダントをくれた少女は、白く柔らかな絹糸のような髪と、海のように蒼くて深い瞳の持ち主だった。 一番最初に出会ったとき、あまりの美しさに一瞬息が止まったあの感覚は今でも忘れられない。
「A・・・か」
その少女の名前は下の名前しか覚えていないものの、つい先日クラスに転入してきた不思議なクラスメートの名前と同じだった。 容姿もそっくりで、本人では？と思ったのだが、婚約者は二つ上の少女だったと記憶している為、偶然ということにしておこうと思った。
「氷木A・・・」
記憶の中の少女と照らし合わせてみても、あの時折見せる無邪気な笑顔やアイスクリームが好物な所、嫌いな人間には塩対応な所、等と似ている箇所は数多くあった。 しかし、決定的に違うのは、瞳の中に何処か闇を含んでいるところだった。 ふと見せるその暗い表情に、彼女には無かったものを感じた。 極偶に、あの蒼い瞳が、とても暗く、まるで冬の夜のような色になり、見ている者を凍り付かせるような笑みを浮かべるのだった。
婚約者と会ったのは、幼稚園児の時だった。 親に勝手に決められた婚約者に会うなんて絶対に厭だったが、如何してもと説得され、渋々一度だけ会うことにした。 絶対に断ってやると固く心に誓っていたが、出会った少女に一目で恋に落ちてしまった。 相手も自分との縁談は快く思っていなかったらしく、頬を膨らませていたが、必死にその子を笑わせて自分のことを好きになって貰おうと、一生懸命に喋りかけて、自分なりにアピールをした。
そして、別れ際には将来を誓い合い、約束の証拠としてお互いにプレゼントを渡しあった。 その時貰ったのが、今握りしめているペンダントだ。 自慢げに不思議な力を操り、世界で一つだけのペンダントを渡してくれた。 自分は彼女の魔法のような力を操る美しい姿にも惹かれた。 今思えば、幼稚園児が一目惚れやら何だとは、随分とマセていたとは思うが、その恋心はずっと続き、今でも彼女を思って自分磨きをしているのだから、自分こそが彼女に一番相応しい相手だと世界中に宣言する自信を持っている。
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なすび(プロフ) - りとのおへやさん» 有難うございます！ これからもそう言っていただけるよう、頑張りますね！ (2019年6月2日 21時) (
レス) id: 6cdc79c834 (このIDを非表示/違反報告)
りとのおへや(プロフ) - めちゃめちゃ良かったです！中也オチマジで神!!!本当に、こんな神作品を読ませていただけて感謝しかないです！ (2019年6月2日 20時) (レス) id: 534e38ce7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なすび | 作成日時：2019年1月30日 21時
