死界魔霧都市 ロンドン 霧の正体 ページ41
バベッジ博士が消える前に、
｢地下に行くがいい…
と、言いフランに言葉を遺していった。
｢次の行き先は、地下だな…｣
｢はい。一旦、ジキルさんの所に戻りましょう先輩｣
｢うん…フラン、行こう｣
｢うー…｣
前を歩く2人の背中を追いかける様に、フランの手を握り歩き出す。
｢………フラン。あの人は、最期に君に会えて良かったと思うよ｣
｢ぅう…？｣
｢あの人は、君が大好きだったんだよ。フラン｣
｢………ぅ…｣
｢だからさ、あの人の為にも後もう少し、頑張ろう？君は戦えないけど、代わりなら出来るから｣
｢…ぅぅう…｣
フランがゆっくりと私の歩調に合わせ、隣に来る。
｢…ぅあ……りが………と｣
｢……うん｣
ゆっくりと、慣れない口の動きで、だが心を込めてフランは言った。
帰ってからは作戦会議だった。
魔術師と言うから、おそらくキャスタークラスが出てくるのではないかとか、聖杯があちらにある以上新たな英霊を召喚する可能性があるとか、いろんな議論が飛び交った。
作戦会議は深夜まで、続き仮眠の後地下に向かって出発するという感じだった。敵のクラスは、ダ·ヴィンチちゃんが調べてくれると言うので、ゆっくりと眠りについた。
夢を見た。
名も知らない、王様の夢。
王様は1人、玉座に。
その目が捉える、風景はどれも玉座からは遠い所。
その人は、唯無表情に眺め続ける。
幸せそうな、家族。恋人同士の男女。友達と遊ぶ子供達。何でもない、日常の風景。
でも、次の瞬間に風景が変わる。
貧しくて、死んでゆく人。病気になり、死んでゆく人。言われのない罪を着せられ、死んでゆく人。
負の感情。嫉妬、強欲、色欲、怠惰、傲慢、憤怒、暴食。
人間の七大罪。
王様は、唯詰まらなさそうに見つめる。
声が聞こえる。
王よ。王よ。何故、何故、あの者達を助けないのですか？
王なら、可能な筈です。王よ。何故ですか？
貴方様なら、ソロモン王なら…！
王様は、静かに、一言答える。
｢それは、私の仕事ではない｣
たった、一言。
だけどその一言は氷の様に冷たく、声を凍り付かせた。
そこで、目が覚めた。
霧が濃く、朝なのか夜なのか分からない。
ただ、悲しい夢を見た。
それだけは、理解した。
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作者名：キーリア | 作成日時：2016年10月2日 21時
