五十九話 ページ19
「…A」
後頭部に衝撃が走った。
俺は前のめりになって地面に倒れた。遠くでトド松が俺の名前を呼ぶ声がしたけど、返事が出来ない。
意識が朦朧として眩暈がする。
「あっ…、A、A……」
Aに向かって腕を伸ばす。
俺に視線を向けたAだけど、Aはにこりとも笑わず、俺に声を掛けることもせず背を向けた。
――――止めなきゃ、Aを……。
そこですとんと俺の意識は落ちた――――。
×××
「一松、一松!!」
気が付いたらそこには兄弟全員が揃っていた。
チョロ松兄さんが俺の事を見降ろしていて、ああ、俺無事だったんだなんて思っていたら、ちらりと視界に入ったその姿に身を乗り出す。
「A!!」
兄さんたちが振り向いた。
こちらを見ているAに、チョロ松兄さんが急に掴みかかった。
胸ぐらを掴まれ、少し苦しそうな顔をしたAはまだ少し弱弱しくもチョロ松兄さんを睨む。
「…何、すんの、チョロ松兄さん」
「なんで手、出したの。俺たちを呼んでおけば良かったのに」
「傷、痛むから離して」
チョロ松兄さんは何も答えず、Aの胸ぐらを離した。
険悪な雰囲気が流れ、皆無言になったがAは踵を返してこの場を去った。
「……A…」
十四松が不安そうな、細い声でそう呟いた。
212人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れもん - 東郷さんについてこの後兄弟に話したのかとか一松を実は守っていたということに対して兄弟がどのような態度で黒斗に接するのかなど気になる部分は多々あります…書いて欲しかった…。主人公が理不尽な目にあって六つ子が悪役に見えなくもないですが良い作品でした。 (2022年1月21日 22時) (レス) @page33 id: bc2584c695 (このIDを非表示/違反報告)
神野 赤月 - とても泣いてしまいました。いい作品ですね! (2017年8月24日 7時) (レス) id: 1f93e928e5 (このIDを非表示/違反報告)
リュウア(プロフ) - 完結おめでとうございます。占いツクールの小説で物凄く久しぶりに泣きました。作者様にこのコメントが読んでいただけるか分かりませんが本当に面白く、何かを考えさせられる小説でした。とっても面白かったです。 (2017年5月28日 21時) (レス) id: ef6262a277 (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - 何か主人公が理不尽すぎる気がします (2017年3月30日 21時) (レス) id: be64f1ec17 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - いの近さん» コメントありがとうございます!私も、読者さんと同じ気持ちです!素敵と呼ばせてもらえる主人公と松野兄弟が書けて良かったです!最後までありがとうございました。 (2017年1月22日 11時) (レス) id: 095eb051dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ルアルア | 作成日時:2016年10月23日 18時