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幸せ49 ページ7

「傷…?」





俺は思わず、自分の傷に手をやっていた。



包帯の上から其処をなぞれば


生々しい傷跡の感触と、ぞくりとした寒気と嫌悪の感覚がある。





斬られた、と言うよりは抉られたとでもいう様に酷かった傷は


親父が治癒の力で塞いでくれた。





そこではた、と思う。





なんで親父の力を使ったのに、傷跡が残っているんだ___?





親父の力は、傷を完治させてくれる。

それこそ、傷跡なんて残さないほど綺麗に。



それなのになぜ、俺のこの胸には___






ガバリと起き上がって、胸の包帯を解く。


「おい!?」と鴆が慌てて止めに入ったが、俺は既に包帯を破り解いてしまった。







真っ白な包帯の下から現れたのは


塞がってこそいるが


子供がのりで下手くそにぐしゃぐしゃと張り付けたような

周囲とは異色の薄皮で覆われた、心臓部の傷跡だった。






じ、っとそこを見続けていれば

鴆が俺の名を呼んだ。



見れば、いつもより皺が寄せられた眉間。


そしてなぜか胡坐ではなく正座する鴆は






鴆「すまねぇ、Aっ!!」






そう言って勢い良く、しかし丁寧に頭を下げた。





「えっ!?ええ!!?ちょっと鴆!?」





何やってんだよ!?

土下座!?あの鴆が!?何で!?



一人パニックになる俺を置いて、鴆は言葉を続けた。







鴆「A…。



お前の、その傷は







もう二度と、消える事はねぇ。」




「・・・は?」





我ながら随分間抜けな声だったと思う。


けどそれ以外どう返事しろってーのよ…。





呆気にとられた俺に、鴆は頭を上げ、それでも姿勢を崩すことなく続けた。







鴆「どういうわけか…

俺の治療と二代目の力をもってしても、その傷はそれ以上塞がらねぇんだ。


お前は一生、その傷を抱いたまま生きなきゃなんねぇ。


これが事実だ。

…すまねぇA。俺が至らねぇばかりによぉ…。」






そう言って鴆は悔しそうに口をつぐんだ。






俺のこの傷は、一生癒える事はない…。






胸を撫ぜ、未だ違和感のあるその傷跡に目を落とす。





 






痛みは感じなかった。


ただただ怖かった。






鼻を刺す鉄の匂いと


内臓を、喉を、口を、全てを支配した血の味


呼吸すらままならない苦しみ







自分の命がどんどん零れ落ちていく


絶対的な死。

圧倒的な恐怖。






一生、忘れる事はないだろう。

この傷を見るたびに思い出すだろう。





それでも俺は…





「…いいよ。」

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紗那(プロフ) - 久しぶりに《この手に掴んだ幸せを》を一気に読み直したのですが、やっぱりstoryや展開などが大好きです(*^◯^*)更新停止になっているみたいですが、もう更新されないのでしょうか・・・・?更新されるのを待ってます(>人<;) (1月28日 17時) (レス) id: a0235214a5 (このIDを非表示/違反報告)
こと(プロフ) - めっっちゃくちゃに好きです。大好きですガチ萌えます!!!本当に最高すぎます!!!!もう更新されることは無いのでしょうか……?続き楽しみに待ってますm(_ _)m (12月11日 18時) (レス) @page50 id: 8bdd3d2cd9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - すっごく、萌えます!!めっちゃ続き気になります! (9月25日 0時) (レス) @page50 id: 1fc4502f62 (このIDを非表示/違反報告)
ポッチ(プロフ) - めっちゃ好こです。男色もストーリーも大好きなので何度も読み返してしまいます。更新はもうされないのでしょうか? (5月24日 11時) (レス) id: bc736021f3 (このIDを非表示/違反報告)
れもん - おわーーー!!好きです!好きすぎます!!!このままリクオも混ざって…まさか若菜さんが…良いですね!!!!!鯉伴様もカッコ良すぎる!!続き、待っております!でも、無理はなさらないでください! (2022年10月25日 1時) (レス) @page50 id: 4d12249e4c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年4月10日 15時

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