幸せ?26 ページ33
「っっぁああ!!!」
がばり、と"起き上がった"。
不意に訪れた見慣れた部屋。
畳や机の茶色
障子の白
月明かりに浮かぶ己の青い掛布
"色"がある。
はあはあと整えもせず息を荒げながら
Aは己の両手を見た。
夢だ。
「ゆ、め…?
ゆめ……、っ、はぁ、あっ…
っっっっ!!!!」
Aは口元を押さえて勢い良く走り出した。
息すらせず一直線にそこを目指す。
たどり着いた洗面所で、
込み上げてくるものを遠慮もせず吐き出した。
不愉快な酸味が口中に広がり
ツンとした匂いが鼻を刺激する。
なにもかも全部吐き出した。
さっき食べた夕食も
その後リクオと内緒でつまんだお菓子も
あの夢への恐怖も、全部。
「おえっ、え゛えっ…!
っは、はぁ、あ…ぁ…」
吐いては息を荒げて、また吐いて
数回繰り返せばもう吐き出すものも胃液も無くなってへたりと座り込んだ。
鮮明に残った景色、音、感覚。
全てが夢だなんて、未だに信じられない。
「………お、やじ…っ」
ぎゅっ、と両肩を抱き寄せて小さく縮こまる。
震えは止まらず
恐怖と苦しみがその小さな体を押し潰さんと襲い掛かっていた。
やがて空は明るみだし、朝日の気配をのぞかせる。
部屋に戻る気にもなれずそのまま1人震えていれば
ひたひたと、廊下を歩く足音が近づいて来た。
首無「若……?」
屋敷の誰よりも働き者な首無の朝は早い。
今日もいつも通り洗面所に顔を出せば、珍しい先客に驚いた。
しかしその様子が可笑しい事にすぐさま気付いた首無は
慌ててAに駆け寄った。
首無「若!?
どうされたのですか、どこか具合でも…
……!」
強張ったAの体を無理に動かせば
ぐったりとした顔と虚ろな瞳があった。
普段の楽しそうな笑顔や優しい目はそこには無い。
首無「若…?一体どうし…」
ぎゅぅ…
驚く首無に、Aはゆっくりと、しっかりと抱き着いた。
「っ、く、びなし…!っう、あぁぁ…!!」
そのままポロポロと、泣き出した。
今までの不安と恐怖と悲しみが、全て込められた涙は
首無の着物をじわりと濡らした____。
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泪(プロフ) - 凛さん» 久々にこっち覗いてみたらコメント来てました…。遅くなってすみません!主人公の容姿は、今はまだ小学生なのですが、鯉伴に似た真っ黒な癖のある髪を肩につかない程度に伸ばしてます。山吹色の瞳も父親譲り。身長は平均位です。でも体重は軽いですよ。細身な子です。 (2018年5月2日 23時) (レス) id: e487e4bccc (このIDを非表示/違反報告)
凛 - なんか文がごちゃごちゃになってますね(汗)すいません (2017年12月10日 21時) (レス) id: 3c998681bb (このIDを非表示/違反報告)
凛 - 読ませてもらってます!また、更新してもらえると嬉しいです♪あと、主人公の容姿をよろしければ詳しく教えて貰えたらと思います。 (2017年12月10日 21時) (レス) id: 3c998681bb (このIDを非表示/違反報告)
泪(プロフ) - アキラさん» お、お早い!!楽しみにしてもらっているのが伝わってうれしいです!!今後はもっと早く更新するので、ぜひ続編も見に来てください! (2017年4月10日 15時) (レス) id: 554fdb0399 (このIDを非表示/違反報告)
泪(プロフ) - NoiSeさん» 遅くなってしまいました!!今後はもっと早く更新するのでお願いします (2017年4月10日 15時) (レス) id: 554fdb0399 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:泪 | 作成日時:2016年8月23日 0時