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四冊目 ページ5

-黒子side-


結局、足の疲労に耐えきれず、車椅子に座って本を読む彼女に声を掛けた。


「すいません...他に空いている席がないので、隣に座らせてもらってもいいですか?」


影が薄いので、気づかれるか少々不安だったが、彼女は驚く様子も特に見せずにこちらを向いた。



-----その途端、僕は息を呑む。




動く度揺れるクセっ毛気味の綺麗な黒髪。

雪のように真っ白な肌。

吸い込まれる様な葡萄色の瞳。



まるで、人形の様に綺麗な少女がそこに座っていた。


僕はその、あまりの綺麗さに目を奪われ、思わず少女の顔を見つめてしまいました。



でも足は限界ギリギリで。

足の疲労による痺れを感じながら、なんとか本題を切り出す。




「...あ、あの......」


少女に声をかけると、彼女はハッと我にかえったようにカバンを探り始めた。


...そして、中から取り出したノートとペンに綺麗な字で文を書き、僕に見せるようにノートを僕の方に傾ける。




『「どうぞ。声が出せないので、ここに書いて返事をしました」』


......!

その短い文に思わず驚いて目の前にいる少女をみると、彼女はなにかを考え込むように俯いていた。


こういう時はどうすればいいんでしょうか......。

きっと、彼女は今までに“その姿と声が出ないという状態”の性で、たくさん苦労したことだろう。


でも、その全てを僕がわかったような気で言うのは、ダメだと思う。



......だって、僕は目の前にいる彼女の名前も知らない“ただの図書室で会った人”ですし。


だから、僕は彼女の言葉に対しお礼を言いつつ隣に座り、彼女と同じようにノートに文を書き、会話のやり取りをした。




始めは彼女も僕の行動に驚いていたようだったが、会話のテンポといい、あまりにしゃべりやすい(筆談ですけど)ので、気が合うのかなと勝手に思ってしまった。



会話の中で自己紹介もしました。

彼女の名前は、白鹿Aさん。
暇な時はいつもここで本を読んでいるそうです。


しかし、彼女が自己紹介をした後にも言葉を続ける


『「でもね、黒子にはできれば声で話して欲しいな」』


「「...どうしてですか?」」




『「あ、いや、私に合わせてくれるのはほんとに嬉しい。でも、なんか黒子の声って落ち着くから、もっと聴きたいなって思うの...ダメかな?」』




......え?

なんか、嬉しいんですけど、その10倍恥ずかしいです...//




『......?』


しかも無自覚系女子ってやつですか......!!←

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作者名:ただの小説好き | 作成日時:2015年5月9日 0時

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