｢勇んで戦う者｣ノ御記＿＿肆. (ページ17)

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南賀ノ神社＿＿壱ページ17

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太陽が西に沈み夜の帳も落ち切って空では月が我者顔で君臨していた。夜と言っても時刻は誰もが寝静まって随分闇が濃い時間帯。少なくとも良い子は寝ているだろう、多分

そんなドの付く深夜にAとシスイはうちは居住区の門前に来ている。原作通り立ち入り禁止のテープが貼られており中から生温い風が吹いた。風に混じって風化し切れていない鉄の匂いに顔を顰め、件の事件がフラッシュバックの様に脳内を駆け巡る

原作と唯一違うのはそこまで里の端に追いやられてはいない事だった。それでも疎外感は拭えないが

(ごめんなさい…)

それは一体誰に向けての謝罪か
口に出してはならない様な気がして心の中で何度も謝る。思い出深い場所だからか、それとも何も出来ずに終わってしまったからか……自分でも解らないのだ

｢大丈夫かA…？｣

｢大丈夫です…南賀ノ神社へ行きましょうシスイさん｣

黄色いテープを跨いで中に入る
わざわざ夜更けを選んで元居住区に訪れたのはシスイの提案であった

＿＿｢｢勇んで戦う者｣について南賀ノ神社の石碑に書かれていた様な気がするんだ｣＿＿

｢南賀ノ神社｣と言えばうちは一族の人間しか入れない神社だ。過去うちは以外に入ったのは柱間くらいか。当時のAですら訪れる事は無かったし会合場所になっているのは原作で知っていたから行く気も無かったのだ

(こう言っちゃ失礼だけど心霊スポットに来てるみたい…)

中に入って進んで行く居住区内は事件後
遺体だけ回収してそれ以外は手付かずの放置状態だった
証拠に至る所に道端や木造の建築物に溜まり、跳ねた"赤茶けたモノ"がこびり付いている

｢……ｯ｣

だがそれよりも恐ろしさを覚えたのは生活感が残ったままのこの状態である

心スポでよく廃墟に行くと荒らされていたり朽ちていたりと見るに堪えない状態になっているが、それより怖いのは｢生活痕が残ったまま人だけが消えた様な廃墟｣だった。元の世界でよく心霊系動画を観ていた為生活痕が残ったままの状態の心スポがどれだけ怖いかは理解しているつもりだ

事故物件になった部屋を掃除業者がクーリングするのは当たり前と思う人もいるだろう。汚れた壁や床を張り替えて部屋全体を真新しくするのにも実は意味があるのだとご存知だろうか？

(死んだ人の物や部屋にはその人の｢想念｣が残る…)

死んだ人の痕跡が一切残らない様に
その場所に亡き人の魂が留まらないで貰うように
この場所はそれと真逆だけれど
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