天才作曲彼女【笠松幸男】 (ページ29)

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第２９話ページ29

結局、私の運動量が笠松先輩にかなうはずがなくて。

近くのカフェへと連行された。

「――――――」

何か言われているのはわかる。

けれど何を言っているのかはわからない。

・・・もう、仕方ないかな。

開き直れば簡単なもので
私は彼の話を中断させて自分の話をした。

耳が聞こえないということを。

原因は言っていない。
これは私の家の問題だと思うから。

もうこれ以上笠松先輩とかかわるわけにはいかない。

『・・・と、言うわけでして。
　今現在、まったく聞こえていない状態なんです。
　ごめんなさい。では』

彼はひどく驚き、悲しそうな顔をしていたように思えた。

けれどもう駄目。
これ以上一緒にいると縋ってしまう。
助けてって言ってしまう。

彼を困らせてしまうから。

私は固まった笠松先輩にお別れを言い、その場を去った。