第24話 ページ24
日が傾き始めた頃、とぼとぼと家までの道程を歩く。
”耳の中が損傷してしまっています。
この様子ですと、一生耳は聞こえないでしょう”
病院で聞いた結果は現実的じゃなくて。
未だに信じられないと思う心が強い。
だけど耳が聞こえないのは真実なのだ。
『・・・もう歌、作れないや』
絶対音感とかいう物を持っていれば
違うのかもしれないけれど、
音程が分からないことは作曲者として死んだも同然。
音がわかるからと言って、歌えるかはまた別の問題だけど。
『もう笠松先輩と会えないや』
彼の、彼の男らしい声が好きだった。
けれど私の耳にはもう入ってこない。
『それにこんな状態で会いたくないし・・・』
心配をかけたくない。
ただの意地だと分かっていても、
いつかは分かることだとしても、
意地を張っていたかった。
家について部屋へと入り、いつも通りパソコンを立ち上げる。
ハルカのアカウントを消そうと思って。
だけど本当に削除しますか?という確認場面へいくと
今まで応援してくれた人たちのことを思い出した。
顔も知らない人たちだけど私の歌を楽しみにしてくれていて。
その人たちのことを思うとアカウントを消すことなんて出来なかった。
だから代わりに
”忙しいので更新はしばらく停滞します”という連絡だけ残しておいた。
これなら笠松先輩が見ても問題ない、よね?
、
自分の弱さを見ないように
私は今まで応援してくれた人を言い訳にしたんだ。
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作者名:ユーリ | 作成日時:2014年10月16日 14時