十七話。 ページ19
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『さとみ、何かあったの?』
朝、私はみみちゃんに声をかけられた。
いつもなら一緒に寝てくれるのに、寝室の扉が閉めっぱなしで中に入れなかったらしい。
『…昨日、いろいろあったんですよね…』
昨日は一言では言えない修羅場が渦巻いていた。
ちょっとヤバかったな、あれは…。
さとみくんは泣いてたし、朱は喚き散らしてたし、もう疲れたわ…。
『そうなんだ…。Aちゃんも大変だったね』
みみちゃんはそう言うと、ご飯が自動で出てくる機械の方へ行ってご飯を食べた。
私も食べようかしら…。
私はキャットフードを食べた。
なんか相変わらず不味いけど…でもさとみくんの気持ちを考えたら食べるしかないよね。
今まで好きだった人に酷い捨てられ方されるってどうなんだろう……。
私がさとみくんだったら苦しすぎて何もできなくなるわよね…。
私はご飯を食べてからさとみくんのいる寝室へと向かった。
「ニャーン」
私は寝室の前で鳴く。
だけどさとみくんからの返事は返ってこない。
今日って学校あるんじゃないの…?
「ニャォ―ン」
あんな女じゃなくても私がいるわよ。
今は猫だけど、この出来事を通してちょっとだけど素直になれたから。
「……A、ちょっと静かにしてて…」
扉の向こうから小さな声が聞こえてきて、私はうつむく。
学校、あるんでしょ?行かなきゃダメじゃない。
「…ニャーオ」
私は諦めずに鳴いた。
何でもいいんだけど、とにかく開けてくれませんか?
私は諦めんぞ、好きだからな。
「……そんなに入りたいの…?」
「ニャーゥ」
入りたい、つーか入らせろ。
「……じゃあ、入っていいよ」
そう言って、さとみくんは部屋の扉を開けた。
姿が見えたさとみくんは、まだ昨日と同じ制服姿のままだった。
でもネクタイとかずれてるからなー…。
ほんとに昨日そのまま寝ちゃったのね。
頬に涙の跡が残っていて、なんだか痛々しかった。
「…今日学校サボるから、電話かかってくるかも…」
さとみくんは扉を開けたらそのままベットに倒れこんだ。
「……A…昨日はごめんね…」
私がベットの下に座ると、さとみくんは布団に顔をうずくませたままそう言った。
私は何でもいいわよ。でもさとみくんは今、大丈夫じゃないんでしょ?
「朱の事、本気で好きだったのに…朱は違ったのかな…」
さとみくんがぽつぽつとつぶやく。
私は悲しくなって、さとみくんの隣に丸まった。
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影の黒鷺 - 絵宙(えそら)さん» ユーザー認証…私が見るときには出てこないんですけど…どうなんでしょう。こちら側としては設定していないので、運営さんのバグですかね…。運営さん…(´;ω;`) (2020年5月26日 16時) (レス) id: 4d7a8fb4ac (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - ユーザー認証が必ず出てくるんですが私だけですか…?(´ ; ω ; `) (2020年5月26日 10時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - 影の黒鷺さん» 私の小説も読んでくださってたんですね!とても嬉しいです泣 これからもお互いがんばりましょーね! (2020年4月11日 14時) (レス) id: 7e1be6dd9a (このIDを非表示/違反報告)
影の黒鷺 - ゆらさん» そんな風に言っていただいて本当に感謝しかないです…!私もゆらさんの小説が大好きでいつも見させていただいております。応援ありがとうございます、励みになります(*´ω`*) (2020年4月10日 22時) (レス) id: 4d7a8fb4ac (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - 黒鷲さんの作る小説って、キャラ設定がしっかりしているうえに、それがブレちゃわないところがすごいと思います。。。夢主ちゃんのツンデレな性格がとても可愛いんだけど、さとみくんと気持ちがすれ違っちゃうともどかしくなっちゃいますねwこれからも応援してます!! (2020年4月10日 21時) (レス) id: 7e1be6dd9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:影の黒鷺 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kagenokurosagi/
作成日時:2020年4月3日 15時