十六話。 ページ18
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「ねえさとみくん!私、さとみくんのこと好きだよ!だから許してよぉ!」
朱が大きな声で喚き散らす。
そのせいで寝ていた他の猫ちゃんたちが起きてきてしまった。
「何を許して欲しいの?乗り換えようって言ったこと?
株を上げるためって言ったこと?Aにイジワルしたこと?」
「……それはっ…ぜ、全部だよ…!」
さとみくんの声がガチトーンすぎて怖いんだが。
私からは背中しか見えないけど、さっきみたいに怖い顔してるんだろうな…。
「…そっか。でも俺は君を許せない。悪いんだけど、もう帰ってくれる?」
固まっている朱を横目に、さとみくんが玄関に出ていく。
朱はさとみくんを目で追ったけど、一歩も動かなかった。
「や、やだよさとみくん…それにさとみくんだって私の事好きって言ってくれたでしょ?
なのになんで、許してくれないの?」
朱が震えた声でそういった。
化粧で元々白かった顔がいっそう白くなる。
「……好きだったよ。でも、そんな風にする朱は好きになれない…」
私はそう涙声で言うさとみくんを見て胸が痛くなった。
"好きだった"そう言ったのは紛れもなくさとみくんの口だ。
さとみくんが朱を好きだったのは本当だったらしい。
そう思ったら辛くなってくる。
「……だから、今は好きじゃないよ…。だから、関係解消。はやく帰って…」
背中しか見えない。
いまさとみくんは、どんな顔をしてるのかな…。
すると朱は諦めたように立ち上がった。
「…じゃあもう良いわよ。私はジェルかななもりに乗り換えるから。
あんたからそう言ったんだから、後悔しても知らないよ……」
朱は嫌みったらしくそう言って、ドアを閉めた。
最後まで逆ギレとは本当に最悪な奴だったな、マジ。
「……はぁー…」
さとみくんが倒れこむようにソファーに座った。
疲れたように顔を手で覆っている。
さとみくん…私はずっと大好きだからね!……なんちゃって…。
ごまかしちゃうけど大好きなのに変わりはないから…な。
私はそんな風に思いながらさとみくんの足にスリスリした。
すると、額の上にポトっと水が垂れてきた。
あ?なんだ?水漏れか?大丈夫かこのマンション…って。
私が上を向くと、さとみくんが涙を流していた。
ツーっと静かに頬を滑った涙が、私の額に落ちたのね…。
「あー…今日はもうだめだ…ごめんね」
さとみくんはそう言うと、寝室に入って、今日一日出てこなかった。
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影の黒鷺 - 絵宙(えそら)さん» ユーザー認証…私が見るときには出てこないんですけど…どうなんでしょう。こちら側としては設定していないので、運営さんのバグですかね…。運営さん…(´;ω;`) (2020年5月26日 16時) (レス) id: 4d7a8fb4ac (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - ユーザー認証が必ず出てくるんですが私だけですか…?(´ ; ω ; `) (2020年5月26日 10時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - 影の黒鷺さん» 私の小説も読んでくださってたんですね!とても嬉しいです泣 これからもお互いがんばりましょーね! (2020年4月11日 14時) (レス) id: 7e1be6dd9a (このIDを非表示/違反報告)
影の黒鷺 - ゆらさん» そんな風に言っていただいて本当に感謝しかないです…!私もゆらさんの小説が大好きでいつも見させていただいております。応援ありがとうございます、励みになります(*´ω`*) (2020年4月10日 22時) (レス) id: 4d7a8fb4ac (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - 黒鷲さんの作る小説って、キャラ設定がしっかりしているうえに、それがブレちゃわないところがすごいと思います。。。夢主ちゃんのツンデレな性格がとても可愛いんだけど、さとみくんと気持ちがすれ違っちゃうともどかしくなっちゃいますねwこれからも応援してます!! (2020年4月10日 21時) (レス) id: 7e1be6dd9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:影の黒鷺 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kagenokurosagi/
作成日時:2020年4月3日 15時